道路や公園の活用には、これからの時代に合わせた街づくりのヒントが詰まっていた
こんにちは!航海士のおばTです。
2022年の出来事にはなるんですが、長浜駅前や黒壁スクエア内に突如として“巨大ハンカチ”がなびいた時期があったんですよね。
正直、2023年になった今でも「あれは何だったんだろう?」と疑問が拭えていません。
モヤモヤしたままでは終われないのが、ボクの性分。「裏ではきっと何かが動いているに違いない」ということで、秘密を探ることにしました。
どうやら行政と民間が連携した大きなプロジェクトが動いているらしい…。今もなお、街中で計画が実行中…?
手探りの中、長浜カイコーに行くと「湖の辺のまち 長浜未来ビジョン」と書いてある冊子を発見!
冊子から情報をたどり「長浜未来ビジョン」の指揮をとっている、長浜まちづくり株式会社の常務・竹村光雄さんから話を伺うことに。
竹村さんのお話を聞いたことで、10年後の長浜の未来が薄っすらと見えてきました。
竹村光雄/長浜まちづくり株式会社 常務取締役
1982年生まれ。茨城県日立市出身。大学在学時より、都市計画コンサルティング会社へ7年半勤務し、複数地方都市の市街地活性化事業に関与。2012年に長浜へ移住。ハードとして伝統的町家・路地・水路など都市空間の再生と、ソフトとしてコミュニティやプロジェクトの醸成とマネジメントを両輪で進めている。
「長浜未来ビジョン」は10年後を見据えた街づくりの指針
「長浜未来ビジョン」は長浜の未来を見据えた“何か”というのは分かるんですが、肝心の中身が分かりません…。どういうものなんでしょうか?
長浜未来ビジョンは、これからの時代において街づくりの目安や目標となるものです。
街づくりの目安…?目標…?
従来のビジョン*との大きな違いは、計画に余白があること。従来のビジョンは行動計画を緻密に組み立て、計画に基づいて動くことが多かったんです。一方、長浜未来ビジョンは、10年後を想定しつつも余白を作って柔軟に対応できるようにしているビジョンです。
※ビジョンとは将来の「あるべき」「ありたい」姿を言葉にしたもの。
“あえて”余白を作った理由はありますか?
今の時代は非常に変化が激しいので、5年先や10年先を完璧に予想するのは難しいですよね。数年先に仮定した状況が明日には変わっていることも考えられるわけです。
コロナなんて誰も予想してなかったもんなぁ。
だからこそ「状況は変わるのが当たり前」という前提で計画を立てる必要があるなと。みんながイメージするものと時代の変化をどうリンクさせるかが、これからの時代に重要な考え方だと思うんです。
時代に合わせて計画の作り方も変わっているのか…。
ちなみに、このマップは、中心市街地を舞台にやってみたいアイデアを持つ人たちが、10年後に叶えたい夢をイメージしたものです。
すごい!一気に世界が広がる感じがします!
商業や観光、居住など、いくつかのカテゴリーに分けて今後の方針を可視化したものが「長浜未来ビジョン」の全体像です。
是非みなさんにもじっくり見てほしいな…。
多様なアイデアをカタチにする「デザイン会議」
長浜未来ビジョンとあわせて「デザイン会議」という言葉も聞いたことがあります。デザイン会議についても教えてください。
「デザイン会議」は様々な視点からのアイデアを形にするコミュニティ。コミュニティ内に新しいアイデアをどんどん追加して、ビジョン自体をより良いものにしていきます。
ビジョン、アイデア、コミュニティ…。
デザイン会議って言うと、1つの場所に集まるイメージがしません?
会議室に集まるイメージがあります…。
1つの場所にこだわらなくていいんですよ。いろんな拠点で集まりつつ、それぞれがネットワークを広げていけばいい。完全に趣味嗜好が同じ人だけが集まったら、アイデアが広がらないじゃないですか。
たしかに!
それぞれの違いや幅を意識しつつ、実現したい未来像を共有できるHUB(結節点)を街のあちこちに作っていきたいんですよね。コミュニケーションや実際の活動を通して、多様なコミュニティと街づくりを柔軟に繋げていけたらと思っています。
ということは、長浜市民みんなが街づくりに参加できるってことか…!
パブリックスペースを活用した社会実験
デザイン会議で実際に取り組んでいることも教えてください。
パブリックスペースの活用を促進するための社会実験事業をしています。
パブリックスペース…?
パブリックスペースは、道路や公園、川などの公共空間のことです。
僕ら(長浜まちづくり株式会社)は、「湖北の暮らし案内所 どんどん」に関係する取り組みの中で、米川で川床を作ったり魚取りをしたり、家族対抗で釣りの大会をしたりする企画をしてきました。
瞬間風速的にではありますが、街とは違う雰囲気が浮かび上がるような経験を、実験的な取り組みの中で何回もやってきたんです。
楽しそう…!
近くにある環境も使わないといけないなと。琵琶湖のほとりにある長浜の場合、環境の魅力を活かさない手はないじゃないですか。
琵琶湖は強みの1つですよね。
ビワイチ(琵琶湖一周)をしている人もいるし、アウトドア好きな人たちも長浜に集まってきています。
長浜に良い流れが来ている…!
環境的な魅力や恵みを最大限に引き出せる“琵琶湖のそばの街”ということで、「湖の辺(うみのべ)のまち」という名称になりました。
琵琶湖で遊ぶのを目的に長浜へ来た人が、ついでに街に来るという流れがあってもいいですよね。
大歓迎!みなさん来てくださいね?
長浜を楽しもうと思った人に対して、自分たちの街がどういう風に役に立てるのか。
琵琶湖や豊公園をどう使うのかを考えるのも、パブリックスペースへの挑戦。手付かずだった公共空間にどんな考え方を持ち込めば、長浜未来ビジョンが前進するのか。まさに取り組み始めたところです。
ボクたちも深く関わっていけるといいなぁ。
今後取り組むのは、琵琶湖と街を繋げること
パブリックスペースの活用をするための取り組みが、あの“巨大ハンカチ”だったということですか?
そうですね。ハンカチを街に掲げていたのは「PICNIC WEEK」内での取り組みの1つです。
“長浜の持ち味を活かした新しいまちの楽しみ方”を地域の方やこれから長浜をもっと楽しみたい方々と一緒につくりたい、という思いから始まった企画。2022年10月22日〜11月6日にさまざまなイベントが行われました。
PICNIC WEEKを開催してみて、いかがでしたか?
1つは、回遊性の向上について議論をしました。A地点とB地点で人の増減の相関関係はどうだったのかとか、この取り組みは回遊性向上に意味があったのかとか。
回遊性…?
※回遊性とは、店舗内や商店街を歩き回ること。
だけど、一番大事な部分は長浜未来ビジョンの意味やデザイン会議の目的を明確化することなんですよね。今まで1年弱ぐらい動いてきたんですけど、現在の立ち位置を確認する議論は毎回白熱します。
立ち位置を知るって結構難しい…。ボクの立ち位置って何だろう?
「組織の現状に役に立つものは何か」とか「目的にふさわしいビジョンが必要なんじゃないか」とか。議論が白熱しては相談して、をくり返しています。
ビジョンに「余白がある」とおっしゃっていたように、今動きながら決めていることも多いんですね。
そうですね。
動きながら決めている今なら、街づくりに関われるチャンス…!(みなさん聞こえますか…今がチャンスですよ…)
今後やっていきたいことはありますか?
琵琶湖と街を繋げることですね。誰が歩いていても「長浜はこういう街だよね」と分かるレベルの街づくりをしていきたい。
「長浜とは」を伝えていくと。
あとは、良い意味で変わってきた街を、子ども達に楽しんでもらえる状況を広げていきたいです。
大学時代に使っていた都市計画の教科書に、長浜の街づくりが載っていたんですよ。
教科書に?すごい!
だから、長浜に移住する前から長浜の先輩たちがやってきた街づくりを尊敬していました。僕が先輩方から学んだように、今の子どもたちも多くのことを学べる街にしないといけないなと思うんです。
「良い街を作る!」というのは簡単に言えるけど、実行に移すのはかなり難しく、時間がかかるもの…。だからこそ「長浜未来ビジョン」という、関わる人の共通言語を作ることが重要になるんだなと気付かされました。
数年先の未来がどうなるかはボクもみなさんにも分かりません。でも、あえて余白を作ったビジョンのもとであれば、柔軟に対応できるでしょう。
巨大ハンカチに続いて、次はどんな仕掛けが巻き起こるのか。「長浜未来ビジョン」の全貌はまだ解明しきれていないのが正直なところ…。
しかしながら、お話を聞いて竹村さんや長浜市の街づくりの動きからさらに目が離せなくなりました。
長浜航海記では今後もプロジェクトの動向を追っていきます!
長浜航海記・航海士。永遠の野球小僧。「長浜にはしばらく帰ってこーへん!」と言いつつ、23歳のときに爆速Uターン。以来、地元のことがちょっぴり好きになりました。野球と筋トレ、オードリーが好き