「二葉屋だから買いたい」県内外から商品を買い求めるファンが八百屋に増え続けるワケ
溢れんばかりのフルーツ。写真から伝わるボリューム満点のフルーツサンド。
「見たらわかる、うまいやつやん」と、つい言いたくなるスイーツの数々。
こんにちは。おばTです。
長浜市内だけでなく他府県からも商品を買い求めるファンで溢れる八百屋さんが、長浜にあるのをご存知でしょうか。
「ハートフルショップ 二葉屋」
一見、普通の八百屋さんに見えるのですが、Instagramのフォロワーは1万7千人(9/4 取材時点)。「お店のInstagramを見て来店しました」と話すお客様も多く、Instagramを効果的に活用してお店の宣伝をされています。
また、8月26日(土)には「おはよう朝日 土曜日です」で取り上げられ、さらに注目が集まっている状況。
「これからの時代はSNS活用が必須!」とよく言われるものの、取り組んだからといってすぐに成果が出るものではありません。しかも、フォロワー数と来店者数は比例しないのが普通の世界。
多くの人から注目を集めた裏側には何があったのか…?
今すぐ成果が出る裏ワザ的な何かがあるのか…?
Instagramの中の人の正体とは…?
二葉屋さんのInstagramのプロフィールを眺めていると「しょーごのアカウント」という文字を発見。この人に聞けば何かが分かりそう。早速連絡を取り、二葉屋さんの人気の秘訣を聞いてきました。
西川昇吾|二葉屋(株式会社西川食品)
八百屋で働く26歳のYouTuber。YouTubeのチャンネル名は「二葉屋のしょーご」。家業である二葉屋で2020年から働き始める。趣味は旅行とスポーツ観戦。好きな食べ物は卵焼きとハンバーグ。「これからもたくさんの方とお話しして、繋がっていけたらと思います!」
コロナをきっかけにInstagramを開設
いきなりで失礼なんですが、しょーごさんは一体何者なんでしょうか?
二葉屋は約60年前に僕の祖父が創業したお店なんです。
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父が2代目で、兄と僕、妹の3人も一緒に仕事をしています。
ご実家なんですね!それにしても、3人とも「家業で働きたい」と思えるのがすごいです…。
兄は2019年、僕は2020年、妹は2023年から二葉屋で働き始めました。
しょーごさんが働き始めた2020年といえば、コロナが流行り出したタイミングだと思うんですが、影響はありましたか?
大打撃を受けました。来店されるお客様の数は減りましたし、飲食店さんや幼稚園、葬儀屋さんなどに卸していた商品も一気にストップ。
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働き始めてすぐにやることがなくなってしまいました。
特に2020年は大混乱でしたよね。
「何かできることはないか」と兄と相談しながら考えた結果、Instagramを開設して情報発信を始めました。
コロナがきっかけだったんですね!
始められた時は今のように、フォロワーが1万人を超えることを想定されていたんですか?
まさか…。
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アカウントを伸ばせるかは分からないけど、とにかく継続だけはしていこう、というスタンスで始めました。
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ここまでフォロワーさんが増えるのはある意味想定外です。
継続が一番難しいですよね。ボクもInstagramで発信をしているので、継続の難しさを身を持って感じています…。
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「インスタ企画」と題して、フォロワーさん限定の企画やInstagram主導の企画も目玉の一つですよね。
Instagramの存在を「いかにお客様に知ってもらうか」を考え、様々な企画をすることになりました。これは兄のアイデアです。
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あわせて、Instagramの存在を知ってもらえるよう、お店に来てくださった方々に地道に声をかけていました。
結局、地道に泥臭く動けるかどうか…!
インスタ企画の認知が広がっていくにつれて、お客様からの口コミも増えるようになりました。
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主婦同士の会話の中で「二葉屋さんのInstagramを見たら、お得に商品が買えるらしいで!」みたいな。
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僕たちがいないところでも話題に上がるのは嬉しいですね。
心強い家族の存在
発信の効果を実感するようになったのはどれぐらいのタイミングですか?
フォロワーさんが数百人の時から少しずつ反響を感じるようになりました。Instagramで「本日特売!」と告知して、早い段階で完売するのを目の当たりにして、効果を実感しましたね。
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1万人以上の方からフォローをしてもらっているのは、本当に感謝しかありません。「いつもInstagramを見ているよ」と声をかけてくださるのが嬉しくて。
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お客様の一言が日々の活動の支えになっています。
投稿を事前に見ていたので、しょーごさんとは初めて会った気がしませんでした。
直接声をかけてもらえるなんて、Instagramを始めるまでは考えられませんでした。他府県から足を運んでくださるのも、発信のおかげです。
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Instagramをしていなかったら、全然違う仕事になっていたと思います。
背中にQRコードが載っているTシャツを着られているのも、斬新で面白い仕掛けですよね。
これは僕の遊び心から生まれたものです。Tシャツを着ていると「何着てるん」「Instagramやってるんや」みたいな、お客様との会話のきっかけにもなるので。
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お客様との関係性を深めるためにも、作って良かったと思っています。
つい近づいてQRコードを読み取りたくなります(笑)
自由に動けているのは、2代目である父が「やりたいことは好きにやればいい」と後押ししてくれることが大きいですね。
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自由にやらせてもらっている分、結果を残さないといけないという責任感もありますが。
インスタ企画もなかなかできることではないと思います。
父や兄、妹や他のスタッフのみんなも相談に乗ってくれるのも心強くて。
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やりたいと思ったことを形にできるのは楽しいし、やりがいもありますね。
二葉屋の皆さんはすごく仲が良いですよね。
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ボクには弟がいるんですが「弟と一緒に家業を継ぎなさい」と言われても、西川兄弟のようにうまくできる自信はありません…。
意見が食い違うことはあっても、お互いにお店のためを思って話しているので、大きく揉めることはありません。
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これがいつまで続くか分からないですけど(笑)
ずっと仲良しでいてください!(笑)
失敗を恐れずに行動する兄、パソコン関係やお金周り、事務関係の仕事を担ってくれる妹。
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兄弟それぞれでタイプが違うのも良い方向に働いています。
まさに適材適所…!
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それぞれの強みがバランス良く噛み合っている状態なんですね。
お客様が自然と笑顔になる秘訣
人気商品の一つである「フルーツサンド」が生まれたきっかけについても教えてください。
Instagramの開設と同様、コロナがきっかけです。「何か新しいことに取り組もう」と考えていた時に、フルーツサンドに目をつけて商品開発を開始。
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フルーツサンドとともにInstagramも注目を集めるようになり、たくさんのお客様に来ていただけるようになりました。
全国的にスーパーや八百屋が注目され始めた時期だったので、流行りにも上手く乗れたんだと思います。
こぼれ落ちそうになるぐらいの量のフルーツが使われていますよね。「こんなに使っても大丈夫?」と、勝手に心配するぐらいです。
お客様に喜んでもらえる方法を考えた結果、季節のフルーツをふんだんに使うフルーツサンドが出来上がりました。
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どこでも食べられるものを提供してもお客様には喜んでいただけないですし、人気も出ないので、やるならやり切ろうと思って提供しています。
二葉屋の皆さんを見ていると「お客様を楽しませたい」というエンターテイメント性を感じます。何か意識されていることはありますか?
祖父が創業して以来、地元のお客様を大事にする姿勢は約60年間変わりません。地元のお客様に支えられて、二葉屋の今があります。
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地元のお客様を大事にするのはこれからも変わらず意識していきたい部分ですね。
店内にいる皆さんが自然と笑顔になる空間ですよね。
逆に、苦労されたことや大変だったことはありますか?
うーーーん。
そうだなぁ。
どうだろう。
パッと思いつかないですね。
思いつかない…?
失敗して苦労してきたこともあるんですけど、その都度「この経験を次に活かせないかな」と考えてきたので、失敗を失敗として捉えていないのかもしれません。
具体的なエピソードはありますか?
例えば、フルーツサンドを大量に作ったものの、悪天候で全く売れなかった時。ボーッとしていても仕方がないので、天候の良かった湖南市に急遽売りに行くことに。
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結果的にフルーツサンドは完売。湖南市のお客様にも喜んでいただく機会になりました。
湖南市まで!?フットワークが軽いですね!
このスピード感は二葉屋ならでは。大手のスーパーや規模が大きいお店では意思決定までに時間がかかるため、同じことはできないと思います。
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柔軟な発想ができるのも強みですね。
Instagramが注目された背景には、小手先のテクニックではなく「目の前のお客様を大事にする」という、60年間語り継がれてきた“二葉屋イズム”がありました。
お店に足を運んでみると、働くスタッフさんの生き生きとした姿やお客様の嬉しそうな表情など、リアルの場でしか味わえない温かな空気を感じられます。まさに、地域密着型のハートフルショップ。
ボクも地道にコツコツと、目の前の人との時間を大事にしようと思わされた時間でした。
二葉屋さんのフルーツサンドやかき氷、ソフトクリームをぜひ食べに行ってみてください。
長浜航海記・航海士。永遠の野球小僧。「長浜にはしばらく帰ってこーへん!」と言いつつ、23歳のときに爆速Uターン。以来、地元のことがちょっぴり好きになりました。野球と筋トレ、オードリーが好き