次第に近づいてきた福祉との距離。長浜で広がるインクルーシブデザインの輪
こんにちは。
2024年から関東と滋賀の2拠点生活を始めた、おばTです。
関東でも生活をし始め「長浜との違いってなんだ?」とか「長浜だからこそできることって何だろう?」と考えるようになりました。地元を出た途端、地元に思いを馳せることってありません?
ボクにとって、長浜航海記の取材自体が、ある意味“長浜ならでは”を探すきっかけになると思うんです。
そんなボクが、ずっと気になっていたのが「福祉とデザイン研究会」の取り組み。2023年10月には、記事前編を公開しました。
記事の最後に「1月27日には公開セミナーが開催されます」と記載しました。(まだ前編を読んでない人は読んでくださいね)
そんなこともあり、数ヶ月間で具体的にどんな変化が起こったのか、長浜市社会福祉協議会の山岡伸次さんと合同会社kei-fuの荒井恵梨子さんに、改めて話を聞いてきました。
山岡伸次|長浜市社会福祉協議会
長浜市出身。長浜とまちづくりが好きで長浜市社会福祉協議会に入職。人と人とのつながりをつくる「地域福祉」を仕事にしている。
荒井恵梨子|合同会社kei-fu
栃木県出身。2018年に長浜市木之本に移住。「地域の文化を穏やかに育てること」をコンセプトに2019年合同会社kei-fuを設立し、同年6月に元町医者の古民家をセルフビルドした「湖北と日用品 コマイテイ」を開店。
半年間で浸透したインクルーシブ思考
お久しぶりです〜!27日は公開セミナーお疲れさまでした!
ありがとうございます!無事に終わりました。
久しぶり〜!おばTは元気にしてましたか?
僕はめちゃくちゃ元気です!公開セミナーはどうでしたか?
コーディネーターの私たちやアドバイザーの一般社団法人シブヤフォントさん、参加者全員が「想像以上に活動できた」と感じましたね。
2023年の6月から各プロジェクトが動き出し、半年間でここまで来るとは。
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そうは言っても、まだまだやりたいことが各々あるので、これからもどんどん盛り上がるだろうなという感じです。
セミナーとしては、前半で各チームの進捗発表があり、後半でトーク形式の話をしました。
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一般参加者の方からも質問や感想をいただき、会自体が盛り上がりましたね。
写真を見るだけで盛り上がりが伝わってきます…!半年間の具体的な変化を教えてください。
参加者の思考がインクルーシブ思考*になったことが、大きな変化だと思います。
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以前は誰にも迷惑をかけない活動内容を考え、情報共有は身内だけでやるような、内向きな考え方で取り組むことが多かったんです。
*「インクルーシブ思考」とは、高齢者やしょうがい者、生きづらさを抱える人なども含め、すべての人を対象にした、さまざまな差異を包み込むという考え方
しかし、プロジェクトを通して外向きの考え方に変わりました。
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例えば、発達しょうがいの子どもの就労に取り組むチームでは、後半にInstagramを開設。
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当事者や必要としている人だけでなく、新たな接点を持つ人に向けて発信を始めました。
就労の困りごとって、発達しょうがいの子どもだけが抱える問題じゃないですよね?
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発達しょうがいの子ども向けにサービスを作っているものの、実はそうではない子どもにも必要とされる部分がある。
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だからこそ、活動内容を発信することは大きな意義があると思うんです。
「実は私も困っていました!」という人が出てくるんだろうなぁ。
デザイナーと当事者がお互いに学び合う
今回、3人のデザイナーに関わっていただけたのも非常に良かったと思っています。
デザイナーの観点から「欲しいと思っている人に商品やサービスを届けましょう!」と言っていただけたのが、参加者にとっても心強かったそうなんです。
最近では、デザイナーが「ブランドのコンセプトをもっと尖らせましょう!」とメッセージを送り、課題を持っている当事者が「なるほど!そういう考え方をすれば良いんですね!」と反応し合っているのを目撃しました。
半年間で信頼関係が生まれたんですね。
当事者とデザイナーがお互い学び合っているんです。
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もう完全な1つのチームですよね。
私としては「困りごとを解決するデザインを考えること」こそが、デザイナーが本領発揮できる分野だと思うんです。
これまでは福祉に関わる内容を「課題解決」って言ってたんです。
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どちらかと言うと、マイナス領域にある課題をなんとかゼロにしようとする感じ。
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でも、この研究会の取り組みを通して考え方が変わってきました。
コーディネーター側の変化。気になります。
「困りごとがアイデアのタネになる」というのがキーワードで。解決すべき課題が明確にあるところからスタートし、課題解決を前提とした上で、より良くする方法を考える。
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こちらは、プラス方向の目線も加わっています。芯が通った考え方があるからこそ、ブレにくいと思うんです。
その考え方、良いですね!図にしたいです!
(前回も取材で話された内容がWebサイトに反映されていたような…)
「発達しょうがいの子どもが見るとしたら、文字や音声はこうしたら良いんじゃないかな?」というような会話が自然と生まれ、方向性が定まった状態で取り組みを考えていたのが印象的でした。
外向きの発信と内向きの発信など、今までは明確に区切られていた境界線が少しずつなくなっているというか。
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シームレスな状態(継ぎ目のない状態)になりつつあるのが伝わってきます。
インクルーシブデザインと今後の展開
前編でもお話されていた「インクルーシブデザイナーを地方で育てたい」という目標がカタチになってきたんですね。
そうですね。福祉に携わる者として何度も取材を受けてきましたし、県外から視察研修にも来ていただきました。
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周りから私たちの活動を「イイね!」と感じてくださるのが嬉しいです。
他の自治体でも解決したい課題は恐らくいっぱいあるんですよ。
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でも、一緒に課題に取り組める人と出会って、チームを作るのが難しくて。そのため、なかなか前に進めない方々も多いと思います。
時間をかけて熱量高く取り組む必要があるので、持続させるのが難しいんですよね。
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当事者自身も「本当に解決したい」という気持ちを持ちつつ、自主的に動くべき部分もあるので。
当事者とコーディネーター、デザイナーの三位一体で進んでいくんですね。
この研究会で良かったことが、長期間取り組めていること。ビジネスとしてプロジェクトをやろうと思うと、納期が優先されて、当事者の気持ちが追いつきにくいことが多くて。
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当事者の気持ちとプロジェクト進行のスピード感を上手く調整しながら、関わる人全員が気持ち良く進めるやり方を取れました。
都市部ではなく、長浜でやることに意味がありますよね。他の自治体で横展開することもできると思いますし。
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今後の活動についても教えてください。
現在動いている3つのプロジェクトは今後も継続します。そして、今後は1〜2チームを追加することも検討しています。
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また、福祉とデザイン研究会の展示会をやれたら良いなと。今までやってきた取り組みを一気に見れる機会を作って、交流も含めた場にしたいと考えています。
今後も続けることで、関わるデザイナーも増え、取り組む内容も発展すると思います。
色んな美術系の大学生、デザイナーの卵も参加しながら「長浜で何かやりたいです!」と言ってくれる人が増えたら良いですよね。
そうなると関係人口も増えるし、長く続けることに意味がありそう。
福祉とデザイン研究会に関わりたい人はどうしたら良いですか?
まずは、インクルーシブデザインチャレンジの公開セミナーに参加してもらうのが良さそうです。
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次は6月頃に開催しているので、ホームページからご確認いただけたらと思います。
実際に雰囲気を掴んでもらって、参加したいプロジェクトがあったら社会福祉協議会さんに相談してください。
「福祉」と聞くと、どうしても自分とは距離が遠い分野の話だと思いがち。でも、福祉とデザイン研究会の取り組みに触れたことで、少しずつ自分ごと化できるようになってきました。
また、自治体や社会福祉協議会、民間のデザイナーが同じ方向を向いて取り組むことに意義があるんだろうなと。都市部から長浜ではなく、長浜から都市部へ。長浜ならではの取り組みが他の自治体に広がっていくことで、長浜の良さも知ってもらえたらなと思います。
「1年前の自分とは考え方や価値観が全然違います!」とお話されるお二人と一緒に、プロジェクトに関わってみませんか?
大きな変化や学びがあることを信じて。
長浜航海記・航海士。永遠の野球小僧。「長浜にはしばらく帰ってこーへん!」と言いつつ、23歳のときに爆速Uターン。以来、地元のことがちょっぴり好きになりました。野球と筋トレ、オードリーが好き