世界が認めた長浜産のウイスキー。日本最小クラスの蒸溜所が仕掛けるファン作りに迫る
「市外の人と会う時はAMAHAGANを買っていくんよ〜」
長浜市出身の方とお話をしていた際、ある単語が出てきました。
AMAHAGAN…?アマハガン…?
どうやら長浜名物のウイスキーらしい。普段あまりお酒を飲まないボクは、お酒には全然詳しくなく、初めて聞く単語でした。
世界からも認められた有名なお酒やで!
そうなんですか!?すごい!これは詳しく聞きに行かないと…。
ということで、AMAHAGANを製造している「長浜浪漫ビール株式会社」の長濱蒸溜所ウイスキー製造部長 チーフブレンダー、屋久(やひさ)佑輔さんにお話を聞いてきました。
屋久佑輔|長濱蒸溜所 ウイスキー製造部長 チーフブレンダー
1987年生まれ。東京都出身。埼玉のバーでバーテンダーを勤めるかたわら、全国の蒸溜所を訪ね歩き、2017年より長濱蒸溜所に勤務。入社当初は蒸溜責任者として蒸溜や仕込みをメインで担当。現在は長濱シングルモルトやアマハガンシリーズ。新商品開発、コラボレーション企画、セミナーなどを担当。社内で唯一のウイスキーチーフブレンダーを務める。
世界が認めたブランドができる背景には、長くウイスキーを残していきたいという会社の思いがありました。
レストランの「長濱浪漫ビール」には食べに来たことがあるけど、AMAHAGANとの関連性はまだ見えていないな〜。いろいろ聞いてみよう。
はじめまして!長濱蒸溜所でウイスキーのブレンドを担当しております屋久と申します。今日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします!
20周年記念事業として「長濱蒸溜所」が誕生
レストランもある「長濱浪漫ビール」さんと、屋久さんが所属する「長濱蒸溜所」さんの違いは何になるんでしょうか?
弊社「長浜浪漫ビール株式会社」は1996年から20年間ずっとクラフトビールを作ってきました。
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20周年記念事業として稼働し始めたのが「長濱蒸溜所」なんです。日本最小規模の蒸溜所として、2016年にウイスキー作りをスタートさせました。
あとから長濱蒸溜所ができたんですね。ようやく整理できました。
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ビールとウイスキーでは作り方が変わるんでしょうか?
麦汁を作るまではビールもウイスキーもよく似ています。麦汁を発酵させて炭酸をつけるのがビール。麦汁を発酵させて蒸溜し、アルコール度数を高めてから樽で熟成するのがウイスキーです。
どれぐらいの期間熟成させるんですか?
ウイスキーは樽で熟成させることで、琥珀色やアンバーカラーになっていくんですが、3年間は樽で熟成させないといけないんですよ。
3年間も!?
そのため、蒸溜所を立ち上げたものの最初は売るものがありませんでした。
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そこで、樽詰め前のウイスキー原酒を使った、蒸溜したてのお酒「ニューポット(商品名:ニューメイク)」を売り始めました。
当時、ニューポットを販売するのは業界では珍しくて。
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「蒸溜したてのお酒が時間を経て、将来どんな味わいになるのか」という成長過程も楽しんでもらうため、4種類のニューポットを販売したのが、長濱蒸溜所のスタートです。
日本最小クラスの蒸溜所が作るウイスキー
Webサイトには「日本最小クラスの蒸溜所」と記載があったんですが、“日本最小”とはどういうことでしょうか?
蒸溜室が8坪しかないんです。
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人がすれ違うのも大変なぐらいの狭い場所で作っています。
面積という意味での日本最小!
大手の蒸留所の場合、1回の仕込みで大体1トンの大麦麦芽を使って仕込みを行うのが一般的です。一方、弊社の場合は半分以下の約425kg。
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最小規模ですので、1回の仕込みで大体1樽分ぐらいしか作れないんです。
蒸溜所の規模によって仕込むことができる量が変わってくるんですね。「AMAHAGAN」はどのタイミングで生まれたんですか?
2016年の蒸溜開始から2年後の2018年。
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将来のシングルモルト*のリリースに向けウイスキー作りにとって最も重要な工程である「ブレンド*」に焦点を当て、生み出されたブレンデッドモルトシリーズが「AMAHAGAN」です。
*1:「シングルモルト」とは、単一の蒸溜所で製造された原酒のみを使用したウイスキーのこと。
*2:「ブレンド」とは、原酒同士を混和し、品質を安定させること。
ということは「AMAHAGAN」は複数の原酒を混ぜたものなんですね。
弊社の代表が海外に行った際に海外原酒を調達してきたんです。
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帰国後、海外原酒を何種類かブレンドさせ、そこで「AMAHAGAN」が生まれました。
先ほど「将来のシングルモルトのリリースに向けて」というお話があったんですが、シングルモルトはもうリリースされたんでしょうか?
2020年5月に、長浜原酒だけをブレンドして作った「シングルモルト長濱」をリリースしました。
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全て日本洋酒酒造組合の定めるジャパニーズウイスキーの表示基準に合致した商品です。
海外原酒を使っているものを「AMAHAGAN」、長浜原酒を使っているものを「長濱」とネーミングし、区分けすることにしました。
長浜をローマ字にして反対から読ませる、というネーミングセンスが素敵ですよね。
社内公募で、たくさんの案から選ばれました。今ではすごく気に入っています。
「AMAHAGAN」が人気になったワケ
AMAHAGANが人気になったきっかけも教えてください。
一番大きなきっかけとしては「アマハガン エディションNo.3 ミズナラウッドフィニッシュ」が「World Whiskies Awards 2020*」で、日本最高賞(ベスト ジャパニーズ ブレンデッドモルト)に選出されたことです。
*「World Whiskies Awards」とは、世界各国からエントリーされたウイスキーの中から、カテゴリーごとの最高賞を決めるウイスキーのコンペティション。
日本最高賞!?長浜のウイスキーが世界でも認められた瞬間だ。
2022年には「アマハガン エディション 山桜」も「ワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキー」に選ばれ、さらに知名度が上がってきました。
プロが評価するプロの味なんですね。
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他には、アーティストやアニメ、ゲームともコラボされているとWebサイトに記載がありました。コラボの最初のきっかけは何だったんですか?
「THE YELLOW MONKEY」のボーカリスト・ギタリストである吉井和哉さん側から、メールでコラボ依頼をいただいたことが最初のきっかけです。
アーティストとウイスキーのコラボ。正直、ピンと来ません…。
ご自身の楽曲をウイスキーにしたいとのことでした。
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発想がロックミュージシャンですよね。
生き様もロック!楽曲をウイスキーで表現するのは難しそう。
何パターンか試作を作って、実際に吉井さんに飲んでいただき、リリースできたのが「YAZŪKA(ヤズーカ)」という商品です。つい最近は第二弾もリリースしました。
コラボの反響はいかがですか?
コラボをしたことで、普段ウイスキーを飲まない人たちにも届けることができ、ウイスキーの面白さを知ってもらうきっかけになりました。
新たなファン層の拡大に繋がるのか。コラボの可能性は無限大ですね。
長濱蒸溜所のことを頭の片隅にでも入れていただければ、将来何かの形で役に立てるのかなと思っています。
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「コラボをきっかけにウイスキーを好きになりました!」という声をいただき、コラボをする意味を感じています。
フットワーク軽く挑戦を続ける会社
長浜から全国、世界へ進出。注目を浴びている理由はどこにあると思われますか?
フットワークが軽いからじゃないですかね。他社と差別化するには、同じことをやっていても面白くありません。
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海外原酒があったりトンネルや小学校を熟成庫にしたり、どんどん面白い取り組みをやっています。
業界に新しい風を吹かせるのは、フットワークの軽い企業というイメージがあります。
若いメンバーが中心となって「やってみよう」をカタチにするのが弊社の特徴です。
また、体験事業に力を入れていて、1泊2日の蒸溜体験ツアーは全国からたくさんの方に来ていただいています。
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他には、ウイスキーのブレンド体験ができるブレンディングセミナーなどもやっています。
目で見て、触れて、直接感じて。お酒好きにはたまらないですね!
地域でイベントをするのはファン作りのため。お客様と直接繋がれるのが弊社の強みです。
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いかにお客様と一緒に盛り上がれるかが一番大事だと思っていますので、今後も注力していきたいと考えています。
「100年後や200年後に残っている蒸溜所は、地元に愛されている蒸溜所だと思うんです」と話す屋久さん。言葉の一つひとつから、会社全体として長浜を大事にする姿勢が伝わってきました。
また「ファンから愛されるブランドを作るためには、ただパッケージのデザインやお店の内装をオシャレにすれば良いわけではない」ということも教えられました。
心から喜んでもらうためにはどうすれば良いのか?長くファンに愛されていくための仕組みは?
届ける相手を深く理解することで、作り手の思いが直接届くことでしょう。
オフラインでの交流と言えば、レストランの扉を開けた瞬間に仕込みの工程が見えるライブ感。美味しい地の物やビール、ウイスキーに合う食事。商品を購入するだけでなく、レストランに友達を連れてきてワイワイできるのも楽しい。
直接体感することで味わえる感動がたくさんあります。商品はオンラインショップやレストランでご覧いただき、体験ツアーにもぜひご参加ください。
長浜航海記・航海士。永遠の野球小僧。「長浜にはしばらく帰ってこーへん!」と言いつつ、23歳のときに爆速Uターン。以来、地元のことがちょっぴり好きになりました。野球と筋トレ、オードリーが好き