VOYAGE RECORD

船員の航海記

お客さま起点で考え続けるファッションデザイナー。自然に笑顔がこぼれるデザインとは

こんにちは。おばTです。

ボクの人生における大きな悩みの一つに「服選び」があります。

それはなぜかって?

ボクにはオシャレの“オ”の字もないから。無難なモノを何となく着る日々を過ごしています。

白か黒か紺色の服を着がち…

ファッションに無頓着だからこそ、ファッションデザイナーに話を聞いたら何か意識が変わるのではないか。そんな淡い期待を持って、ファッションデザイナーのワタナベユカリさんに話を聞いてきました。

ユカリさんの仕事術を聞くだけでなく、自分の美意識を上げることはできるのか。ファッションに詳しくない人ほど、記事を読み進めてもらえたらと思います。

ワタナベユカリ|ファッションデザイナー

1987年生まれ、埼玉県出身。武蔵野美術大学を卒業後、古着のリメイクを中心とした犬の洋服屋にて企画、制作、販売を行う。2016年に文化服装学院服飾研究科とwrittenafterwardsデザイナー山縣良和氏主宰「ここのがっこう」へダブルスクールで通い、表現することやものをつくることの根本と技術を学ぶ。在学中、「仕立屋と職人」を結成 。2020年より株式会社仕立屋と職人の代表取締役を務める。

<先に分かるデザイン発注のいろは>

ご無沙汰しております〜!タカさん*とはよくお話するんですが、ユカリさんとはかなり久しぶりな気がします!

*ユカリさんとタカさんは「株式会社仕立屋と職人」の共同代表

そうだね。おばTのことは色々聞いてますよ〜!

今日は「ファッションデザイナー」としてのユカリさんのお話を聞かせてください!

もちろん。よろしくお願いします!

お客さま起点で考える服作り

ファッションデザイナーと一口に言っても色々な仕事があると思うんですが、ユカリさんはどんな仕事をされているんですか?

私は企業のユニフォームと自社ブランド「シャナリシャツ」を作っています。

「シャナリシャツ」制作の流れ

ユニフォームに関しては「どういう仕事をしていて、どんな動きが多いのか」という観点から、お客さまに最適な手段の提案をしています。

どんな形状が良いのかは仕事内容によってさまざま。業種業態によっても変わります。

機械系と食品系では求める機能が全然違うもんなぁ。

シャナリシャツに関しては、着物に興味がない人でも着てもらえるようなデザインにするのを心がけています。

ありがたいことに、最近はオーダー数が増えてきました。

二人とも楽しそう。引用:滋賀夕刊

「どんな服を作りたいか」という商品ありきの考え方ではなく、使う人の気持ちから考えた内側からのアプローチなんですね!

服って、肌に触れるし一番身近なモノなんですよね。お気に入りの服を身に着けると自然にテンションが上がるじゃないですか。

だからこそ、お客さまにとってどんな服が良いのかをいつも考えています。

毎日のように着るユニフォームやシャツがお気に入りだったら、仕事へのモチベーションも上がるだろうなぁ。

機能性とデザインを両立するためのサービス理解

仕立屋と職人は元々、職人の作業着を作ることからスタートしたんです。福島で活動する方から「自分が職人だと分かる作業着が欲しい」と言われて。

そこで「私たちに作らせてください!」となったのが始まり。

「職人が持つ内側の部分をどう表現するか」から始まったんですね。機能性は損なわず、職人らしさを表現するってかなり難しいことなんじゃ…。

「機能性」と「想いの具現化」の両立って、かなり大変そう。

そうなんです。私がしているファッションデザインは、機能性とデザインを両立するのがポイント。実際に使った上で、機能性も含めて喜んでもらえることが大事です。

必要な機能は業種業態によってバラバラじゃないですか。そうなると、お客さまが提供しているサービスへの理解が重要になりますよね。

どこかの記事で「職人に弟子入りする」と記載があったんですが、本当なんですか?

そうですね、長い時で1ヵ月間近く弟子入りすることもあります。職人側もよく受け入れてくれますよね(笑)。

1ヵ月間!?

「弟子入りさせてください!」って言うユカリさんもすごいですし、受け入れる職人もすごいです。

ユニフォーム作りは、会社の資金を投資するということ。代表(職人)だけでなく、社員みんなが納得するモノを作るには、サービスや会社の理解が必須です。

会社の特徴や強みって、意外と自分たちで気づかないじゃないですか。客観的な視点をお伝えするのも私の役割の一つですね。

間近で仕事を見ることで、ユニフォーム作りに必要な要素が見えてくるんだろうなぁ。

お客さまと一緒に進めるから納得感が生まれる

デザインって凝り出したらキリがないと思うんですが、何を基準として「完成」とするんですか?

私の場合、複数の選択肢を提示してお客さまに最終決定をしてもらっています。生地やデザインの違い、組み合わせをいくつも準備して、あれこれ話しながら一緒に決めていく。

私の仕事は、決めてもらう準備をたくさんすることですかね。

お客さま自身で選べると納得感がありそう。自分で決めた感覚があると嬉しいだろうなぁ。

RICE IS COMEDY 一張羅デザイン

実は、このやり方をとっているのも過去の反省から来ているんです。以前、プロダクトを作った時に自分主導で進めてしまい、納得感が薄いモノが出来上がってしまって…。

発注者とデザイナーの間で起こる“あるある”ですね。

これは進め方が悪かったんだと反省して、一緒に考えて最後はお客さまに決めてもらうやり方をするようにしました。

デザイナー側で勝手に進めないよう気をつけています。

納得感のあるモノができるのは一緒に作るから

今って、ネットで簡単に服が買えるじゃないですか。その中で、服作りをいかに“特別な体験”にするかが大事だと考えています。

わざわざ作るのに、他の洋服と同じだったらあまり意味がないと思うので。

服にお客さまそれぞれの意味づけがされるんですね。

目に見える服を作ることだけが価値ではなく、服を作ったり選んだりする過程で関われることもファッションデザイナーの価値なんだろうなぁ。

ファッションデザイン発注のいろは

ユカリさんのもとに来る相談ではどんな相談が多いんですか?

最近の話だと、会社のブランディングや新店舗オープンのタイミングでご相談いただくことがありました。他には、職人が使う一張羅のオーダーとか。

一人用から大人数用まで、幅広く対応できるので、気軽に相談していただけると嬉しいです。

守備範囲が広い!

相談時には何をお伝えするのが良いんでしょうか?

ユニフォームの場合、一着あたりの予算や欲しいアイテム、会社の仕事内容などを教えていただきたいです。できれば、今後の方針や働き方、社員からの要望なども。

かなり細かく聞くんですね。

あとは、会社の変遷も教えていただきたいです。今までどんなことをしてきたのか。過去の実績や取り組みに会社のカラーが出るので。

過去の流れと今後の流れを分断しないよう、会社のことも汲み取った上で制作をさせていただきます。

「流れを分断しない」って大事ですね。突然会社の雰囲気が変わったら、混乱する人も多そう。

ちなみに、相談してから納品までの期間はどれぐらいでしょうか?

アイテム数にもよりますが、最短で3ヶ月ぐらい。

流れとしてはデザイン相談を経て、何着か提案して方向性を決めていきます。そして、サンプルを取り寄せて実際に試着。そこから本発注という感じですね。

時間をかけた分、思い入れの強いモノになるんだろうなぁ。

試着すると、サイズ感や肌触りなどイメージと違うこともありますし、認識のズレがないよう、丁寧にすり合わせを行います。

そのため、少し余裕を持ってスケジュールを確保しておいていただきたいです。

最後に、ユカリさんにとって「良いファッションデザイン」って何ですか?

お客さまが笑顔になるデザインですかね。良い、悪いの定義ってお客さま次第じゃないですか。

だからこそ、お客さま視点で満足してもらえるかどうかが大事だと思うんです。

お客さま起点の考え方だから、満足度が高いんですね。

納得してもらえる作り方をその都度相談しながら提案する、というのが私のやり方。

デザイナーに頼む価値は、お客さま自身では想像できない部分を提案してもらえることだと思うんです。

自分が表現したいものではなく、お客さまが満足する商品を作る。ユカリさんの話を通して、ちょっぴりですがデザイナーとアーティストの違いが分かった気がします。

また、洋服との向き合い方を反省しました。自分の大部分を形成する洋服にはある程度こだわらないとなと。着るとテンションが上がる服を自分の意思で選び、毎日の生活に彩りをプラスするようにします。

サイトを見ると分かるように、商品一つ一つにこだわりとオリジナリティが詰まっているのが、ユカリさんの特徴。

ユニフォームやシャツを作る際にはぜひ相談してみてください!

株式会社仕立屋と職人 HP

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