街中にある建物は試行錯誤の結晶。建築家との出会いが建物の命運を握る
こんにちは。おばTです。
普段何気なく見ている住宅やビルって、最初から姿や形があったわけではありません。何もないところから少しずつ作り上げられるもの。
当たり前と言えば当たり前の話。そうは言っても、何もないところからどんな過程で建物が建つのか気になりませんか…?「この家の場合は?あの建物は?」と考えれば考えるほど、誰かに聞かずにはいられなくなってしまいました。
建物が建つまでの裏側を聞いてみたい。
そこで、建物のプロである建築家の牛島隆敬さんに「建物が建つまでの過程やデザイン」についてお話を聞いてきました。
牛島隆敬|建築家
湖北地域を中心に建築設計事務所を主宰する建築家。2016年に事務所を設立。2021年より横浜から米原へ移住。住宅や小さな店舗、大型の施設など、様々な建物を設計している。趣味は釣りや読書、工芸品の収集。
<先に分かる「デザイン発注のいろは」>
目次
牛島さんが過去に手がけた建築物。
ハウスメーカー・工務店・建築家、それぞれの違い
「建築家=建物を建てる人」というざっくりなイメージしかないんですが、実際はどんなお仕事をされているんでしょうか?
私の場合、個人が住むための住宅設計や公共施設、店舗の設計などを行っています。一番多いのは、個人の住宅設計ですね。
建築家さんも個人の住宅を手掛けられるんですね…!てっきり、個人の住宅を建てるのはハウスメーカー*や工務店が手がけるものだと思っていました。
※「ハウスメーカー」とは広範囲な営業網をもつ大手住宅メーカーのこと。
ハウスメーカーや工務店、建築家の違いってどこにあるんでしょうか?
大手ハウスメーカーのウリは安心と安全。テレビCMを積極的に出しているような大手だとブランドの安心感があります。
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地元の工務店の場合、一番の魅力は金額の安さ。あとは、地元ならではの付き合いや信頼感があることもあります。
一方、私たちのような建築家の特徴は、デザインにこだわりを持てること。ハウスメーカーや工務店が手がけないようなデザインを一から追求できます。そのため、建築家に相談される方は、デザインに興味がある人が多いですね。
「デザインに興味がある」というのは具体的にはどういうことですか?
自分好みの雰囲気にアレンジしたり心地よさを追求したりしたい人が「デザインに興味がある」と言えるんじゃないでしょうか。
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相談の段階では「素敵な家や空間に住みたいんです」という漠然とした思いから始まることが多いですね。
相性が良い建築家を探そう
牛島さんへの相談の流れについて教えてください。
まずは「家を建てたいです」という漠然とした相談からスタートして、土地の有無や予算について話をします。土地が決まっていないお客様に関しては、土地を一緒に探すことも。
予算や土地が決まると、全体の予算から土地代を引いて、建物にかけられる予算が出てきます。その段階で、ハウスメーカーや工務店にお願いするのか、はたまた建築家にお願いするのか、検討することになります。
使えるお金を決めるところからスタート!
ハウスメーカーの場合、住宅展示場やオープンハウスに行ってイメージを膨らませることが多いですね。
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一方、建築家の場合は展示場がないので、過去に手がけた物件を見て回ることが多いです。「住宅を検討されている方がいるので物件を見せていただけませんか?」と過去に担当したお客様に直接連絡して一緒に見に行きます。
建築家が作る建物は少し特殊。良くも悪くもお客様との相性がハッキリ出ることが多いんです。
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「めちゃくちゃ良い!」となることもあれば「違うな」となることも日常茶飯事。一緒に物件を見て断られることもあるので、ある意味断られることには慣れています(笑)。
建築家によりますが、建築家はお客様との相性を重要視しているからこそ、しつこい営業を行わないケースが多いです。
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お客様に「自分の感覚と合う」と思ってもらわない限り、強く営業しても良い結果に結びつかないので。
何十パターンから選りすぐりの一案を見つける
あの模型たちの出番はいつ来るんでしょうか…?
予算や土地が決まると、土地の状況や形状が見えてくるので、お客様の希望を聞いた上で、図面を書きながら模型を作り始めます。
すぐにイメージ通りの模型ができるものなんですか?
いきなり良いデザインが浮かぶというよりは、たくさんの模型を作る中で、お客様に合うデザインを模索していく感じですね。期間としては1ヶ月ぐらいです。
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最初の段階で何十パターンの模型を作って、お客様の思いに近い一案を選んでもらいます。
模型にすると一気にイメージしやすくなりますね!
最初の1ヶ月で大まかな方向性を決めて、およそ5ヶ月の間に詳細な図面を仕上げていきます。
5ヶ月間、お客様とのコミュニケーションは結構とられるんですか?
プランが固まった後に、家具をはじめとする細かい内容を打ち合わせします。その後も1ヶ月半に1回ぐらいのペースで打ち合わせすることが多いですね。
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家具は住宅に合わせて特注で作るので、お客様とやりとりする中ですり合わせていきます。
家具も特注なんですね。デザインを生み出すにはひらめきやアイデアが必要になると思うんですが、どんなことを意識されていますか?
インプットしてきた知識やひらめきもありますが、手を動かすことを一番大事にしています。頭で考え続けてもなかなか良いものはできません。
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模型を作っては考えて、さらに修正を繰り返して。手を動かすからこそ見えてくる情報を重要視しています。
頭だけでなく身体で!
また、地域に馴染むようなデザインにすることを心がけています。
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例えば、私の自宅は低い土地で、浸水地域なんですよ。だから、浸水しても1階は土間床にして掃除をしやすくしたり2階は守れるようにしたりするなど、土地の特徴に合わせたデザインにしています。
だからこのデザインになるのか!
土地や地域が変わると全然違ったデザインになります。お客様のライフスタイルによっても変わってくるので、お客様の理想のイメージも引き出すようにしています。
工事が終わるまでを見届けるのも建築家の仕事
図面を作った後の流れを教えてください。
見積もりをとり、工事会社が決まれば、本格的に工事がスタート。私は週に1、2回現場に行き、図面通りに工事が行われているか確認するのが仕事です。
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また、現場でもデザインの修正を行います。
工事が終わったら牛島さんの仕事は終わりですよね…?
それが違うんですよ。工事が完了したと思っても実は終わっていなかったり、実際に住んでみて感じる違和感があったり。結局、工事が終わってからの1ヶ月ぐらいはお客様とやりとりすることが多いです。
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また、工事が終わってから1年後に検査もするので、お客様とは本当に長いお付き合いになりますね。
ここまで長く伴走されるとは、知りませんでした。
工務店やハウスメーカーの場合、自社で設計から工事までを行っていますが、建築家の場合、工事は行なっていません。
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現場を管理する人と工事を行う人が違うという、第三者の目線があるからこそ、現場をスムーズに進められるというメリットもあります。
建築家に依頼する際の費用
建築家さんに依頼する費用はどれぐらいでしょうか?
相談は何度でも無料ですが、模型を作って案を出してもらうには、約15万円の手付け金をお支払いいただくのが一般的です。
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一案が決まった段階で契約を結び、住宅を建てるためのより具体的な話を進めていきます。
設計料の一般的な相場は、工事費用の12〜15%。例えば、3,000万円の工事を行うとなると、360万円〜450万円。建築家は土地の形状に合わせて一から設計するため、ハウスメーカーや工務店よりも設計料が高くなります。
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通常の住宅なら、設計料と工事費用を合わせたトータルの金額は、高い順に、大手ハウスメーカー、建築家、工務店、ということが多いです。
順番に並べると分かりやすいですね!
予算決めの段階から相談してもいいんでしょうか…?
もちろん大丈夫です。
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正直、相談を受けてからすぐに契約が決まるものではありません。じっくり考えていただくのが当たり前の世界ですし、相談から数年後に案件として動くこともあります。
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だからこそ、まずはざっくばらんに気軽に相談していただければ嬉しいです。
「気軽に相談していいよ」と言っていただきましたが、相談をする際にある程度明確にしておいた方がいいことはありますか?
予算の部分はある程度整理しておくことをおすすめします。極端な話ですが、予算が100万円では家を建てられないので。
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もちろん、予算の中で最適な方法を提案させていただきます。当初は新築の住宅を希望されていたとしても、予算や求めるデザインを聞くうちにリノベーションを提案することもあります。
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幅広い選択肢の中から最適な提案をさせていただくので、まずは予算について整理した上でご相談ください。
建築家さんが手掛けるデザインは、パッと思いつくものではなく動きながら生み出されるもの。いつもボクたちが目にしている建物は何十パターンもの試行錯誤の上で成り立っているとは知りませんでした。
あの建物のデザインは最初から決まっていたのかな?思いつくまでにどれぐらいの時間がかかったんだろう?
建物に対して色んな視点を持つと、街を歩くのも楽しくなりそう!
自宅や店舗の建築、改修の相談は牛島隆敬建築設計事務所さんや牛島さんまで。ホームページからお問い合わせできるので、ぜひ気軽にご連絡ください。
長浜航海記・航海士。永遠の野球小僧。「長浜にはしばらく帰ってこーへん!」と言いつつ、23歳のときに爆速Uターン。以来、地元のことがちょっぴり好きになりました。野球と筋トレ、オードリーが好き