本当は作ってからが勝負!地域のお店×無印良品で探す出口のトライアル「つながる市」
こんにちは!
取材のあとは、お気に入りの喫茶店でひと息つくのが日課の航海士、ゆかりです。
ゆっくりお茶をしていると、まわりの常連さんからいろんな話が聞けたりするのも喫茶店のいいところ。
「今度◯◯さんが無印良品に出店するらしいよ〜」
「えっ、すごい!無印で商品を扱ってもらえるってこと?」
「いや、なんかそういうイベントがあるんだって」
そんな話を聞いたと長浜航海記メンバーに話していたところ、「その企画なら、長浜の商工会議所が関わってるよ。話を聞きに行ってみる?」との提案が。それはぜひ聞いてみたい!ということで、さっそく長浜商工会議所に行ってきました。
佐藤満穂子 | 長浜商工会議所 経営指導員
長浜商工会議所の中小企業相談所に所属する経営指導員。長浜商工会議所と無印良品がタッグを組むきっかけを作った仕掛け人。地域の事業者が出店するマーケット「つながる市」の企画から運営、広報なども務める。
目次
「作る」だけじゃなく、「売る」もサポートしたい
さっそくですが、地域のお店が無印良品に出店できるイベントがあるんですか?
はい、「つながる市」ですね。全国の無印良品で「ヒトとつながる、マチをつなげる」をコンセプトに不定期で開催されているマーケットです。
それです!でもそのマーケット、商工会議所とどんな関係が?
長浜では、長浜商工会議所と無印良品アル・プラザ長浜が共同で「つながる市~素材でつながる~」と名付けた独自のつながる市を開催しています。
毎月第3土・日曜日に、無印良品アル・プラザ長浜の店内でやってるんですよ。
もともと商工会議所って中小企業の支援機関なので、これから事業を始めたい人に向けての創業塾やセミナーをやってたんです。
補助金申請のサポートとかもされてますよね。事業や商品を「新しく作る」お手伝いをされているイメージです。
でも、本当に難しいのって作ってからの出口で。
出口…売り方とか、宣伝の仕方とか?
そう。宣伝方法に悩んでいても、1人で作って1人で販売していると、なかなかそこまで手が回らない。
まずは商品を作ることが最優先になっちゃいますもんね。
商工会議所としては、そういう人たちの存在を地域の人にもっと知ってほしいと思っていて。
それで、つながる市をやっている無印良品の担当者にアプローチをかけたんです。電話をして、「地元でがんばっている人たちの商品を扱っていただけませんか?」って。
すごい行動力!いきなり電話をして、上手くいったんですか?
それが、上手くいったんです。
実は無印良品側も、出店者のマンネリ化や自分たちの売り上げにつなげる方法について悩んでいたみたいで。お互い悩みを抱えているのがわかって、もしかしたら利害が一致するのでは?と思いました。
ナイスタイミングだったんですね!
すぐに会ってお話しすることになって、こちらでPRしたい事業者と商品のリストを作って見てもらいました。そしたら担当の方が、「長浜にまだこんなにいろんな商品があったんだ!」って。
すぐ一緒にやりましょうとなって、企画書を作りました。そこで出店者の候補はもちろん、出店者と無印良品をつなぐことで相乗効果が生まれる仕組みを提案して。
相乗効果が生まれる…仕組み?
はい。これは全国のつながる市の中でも、めずらしい試みだと思います。
人と人をつなぐアイデアこそが、私たちが間に入る意味
それで、どんな仕組みを発明したんですか?
「地元店のアイテムと無印良品の商品のコラボレーション」です。
たとえば、出店者であるATARA COFFEEのコーヒーと無印良品のバームクーヘン、小松堂重房の和菓子と無印良品のお茶という風に、それぞれの商品をペアリングして提案しました。
「バナナバームクーヘンに合うのはこのコーヒー」というように、出店者さんにペアリング内容を考えてもらって。
プロの考えたペアリングが味わえる、それは嬉しいかも!
出店者さんたちも積極的に呼びかけをしてくれて。
「このバームクーヘンはあそこで売ってますよ!」と無印良品の売り場に誘導してくれたり。
出店者がそこまで協力してくれたのは、何か秘訣があるんですか?
出店者には、つながる市に出店すること自体にすごくメリットがあることを伝えていました。
今年度については出店料は無料で、什器は無印良品から貸してもらえるし、何より無印良品の一角でお店ができるんです。
わぁ!それはかなりの好条件ですね。
だから商工会議所としても、出店する会員さんに「こんな好条件で出店できるんだから、お返しにしっかりお客さんを誘導しましょうね」と言えるわけです。
お互いにとっていい形を作る。それが、私たち商工会議所が間に入る意味だと思っています。
出店を終えて、みなさんの反応はどうでしたか?
すごくよかったです。「自分のお店で売ってるよりずっと売り上げがよかった!」という人も。
あとは初めてのお客さんとたくさん出会えて、その人たちが後日お店にも来てくれているそうで。「出てよかった、本当にありがとう」と言ってくれています。
すごい!さっそく効果が出ているんですね。
「みんなで滋賀を飛び出そう!」と思っていた
つながる市をやってきて、見えたものはありますか?
私としては、9月に開催したつながる市が特に印象に残っていて。
おっ、何か発見があったんですか?
つながる市を始めた時は、いずれはみんなを連れて「これが滋賀県のものだよ」って、県外に出て行きたいと思っていたんです。まずは長浜店で実績を作って、本社の許可を得て、全国の無印良品で滋賀の物産展みたいなことができたらいいなって。
でも、つながる市で出店されている様子を見て、それは違うなと気づいたんです。
違う、というと?
確かに。送っても壊れにくいし、百貨店やセレクトショップにあってもおかしくなさそうです。
一方で、tronc(トロン)のフラワースイーツは、大量生産できないし、賞味期限も短い。
こういう違いがあるのを目の当たりにして、地元で買われるのに向いている事業者と、全国展開に向いている事業者という棲み分けができることに気がついたんです。
言ってしまうと当たり前なんですが、とにかく「つながる市を開催する!」という出口のことばかり考えていて、その後どう続けるのがいいかをじっくり考えられていなかった。
この気づきはすごく大事で、これからに活かせると思いました。
それぞれの事業者が活躍できるルートを用意したい
もし、来年度以降もつながる市が続けられるなら、どんな形にしたいですか?
全国展開に向いている事業所さんには、そういうルートを用意できたらいいなと思っています。
まずは近くの彦根、次は草津、そこから大阪や東京などでも開催できるように、無印良品の中で自信を持ってつないでもらえるように、実績を作るのが目標です。
逆に地域消費に向いている事業者さんは、もう各自で無印良品と面識があるので、長浜でのつながる市に出るルートはできたと思っています。
そういうルートや関係性作りも、佐藤さんの役割だったんですね。
こういうプロジェクトって、1年間で終わってしまうこともよくあるじゃないですか。
でもこういうことこそ続けないと定着しない。
予算が取れなかったとか、組織の方針が変わったとか…見てる側は「やったらいいのに!」って思うけど、難しいこともあるんですよね。
全国へのルートも長浜でのつながる市も、どちらも実現できるように。そしていちばんいい形で続けられるように。今は実績を作りながらいろんな人と関わって、これからにつなげるための仲間作りがしたいと思っています。
そこまで考えてくれる人が地域にいるのは、みんな心強いんじゃないでしょうか。
やっぱり「事を起こす」って人が作り上げていくもの。人が動かないと、人は動かないことを実感しています。私自身も、事業者さんにとって「この人が言うなら大丈夫だろう。何かあってもしっかり話ができるから」と思ってもらえる仲間でありたいです。
最初は「無印良品のマーケット?おもしろそう!」と思いながら聞いていたつながる市のこと。フタを開けてみたら、いろんな仕掛けや新しいものへの挑戦、思いがけない気づきが盛りだくさんの、今まさに「生きて動いている」プロジェクトでした。
長浜独自のつながる市を企画、
長浜独自のつながる市を企画・運営している佐藤さん。綿密に計画を練り、壮大な夢を描きながら、「最後は人!」と力強くおっしゃっていたのが印象的です。
地域の人が、自分のまちのいいものに出会い、つながる。長浜でのつながる市は、2025年3月まで順次開催予定です!
長浜航海記・船員。彦根生まれ、彦根育ち。会社員、ショップ店員を経て流れ流れてフリーライターに。オタク気質で気になる話題になると仕事を忘れて暴走しがち。カレーと猫とホラー映画があればしあわせ。