VOYAGE RECORD

船員の航海記

250曲を手がける作曲家が描く、よさこいと地域音楽の未来とは?

12月に入り、街中ではイルミネーションが輝き始め、テレビでは歌番組が増えてきましたね。

みなさんもお気に入りの曲が流れると、つい口ずさんでしまうことがあるのではないでしょうか?

最近の日本の音楽シーンを見ていると、複雑で凝ったアレンジが特徴的な曲が多い印象があります。

そこで、ふと疑問が浮かびました。こうした音楽って、どうやって作っているんだろう?

私のイメージはこんな感じ。皆さんはどうですか?

幼い頃にピアノを習っていただけの私にとって、作曲の世界なんてまるで未知の世界。

そんなとき、長浜で活躍している作曲家の方がいるという噂を耳にしました。

地元を拠点にしながら、よさこいの過去制作数250曲以上を手がける作曲家のプロフェッショナル坂本真一さん。

これは直接お話を伺うしかない!そう思い立ち、早速坂本さんの元へ足を運んできました。

作曲の裏側、そして音楽の作り手が見ている景色。一体どんな話が飛び出してくるのでしょうか?

坂本 真一|作曲家

1987年生まれ。長浜市出身。幼少期からクラシックピアノに親しみ、中学3年生で作曲家を志す。高校卒業後、大阪のCATミュージックカレッジでDTMを学び、作曲のスキルを磨く。地元に戻り、よさこい楽曲制作を中心に250曲以上を手がけるほか、地域文化を音楽で発信する活動を展開している。

<先に分かる「デザイン発注のいろは」>

音楽に導かれた中学時代の決断

まず最初に、坂本さんが作曲家を目指そうと思ったきっかけを教えてください!

僕が作曲家を志したのは中学3年生の時です。それまでも音楽は好きだったんですが、「これで生きていこう」とはっきり決意したのがその頃ですね。

中学3年生って、かなり早い段階での決断ですね!

元々はピアノを習っていて、ヤマハ音楽教室に通っていました。でも、クラシックに限らず自由に音を作るのが好きで、自分なりにいろいろ試していました。そのうち、音楽を作る楽しさにどんどん惹かれていったんです。

その後、高校時代はどのように音楽を学んでいたんですか?

高校生のときに、ヤマハ音楽教室でプロのキーボーディストである大村篤史さんに習う機会があったんです。大村さんは、バンドのバックで演奏した経験も豊富で、リアルな音楽業界の話も聞かせてくれました。

音楽制作の魅力を語るひととき

具体的には、どんなことを教わったのか気になります!

クラシックピアノの基礎から、シンセサイザーの扱い方、作曲のテクニックまで幅広く学びました。高校卒業後は、大阪にある専門学校CATミュージックカレッジの作曲専攻に進み、本格的にDTM(デスクトップミュージック)を学びました。

大阪で音楽を学んだ後、どのタイミングで地元の長浜市に戻られたんですか?

大阪で専門学校を卒業してから、しばらくは音楽制作の会社を仲間と一緒に立ち上げて活動してたんですよ。でも、大阪の都会の喧騒がだんだんしんどくなってきて。「やっぱり地元に帰ろうかな」って思うようになったんです。

地元に帰ろうって思う瞬間って、どんな感じなんだろう。

「自分がやりたいことをちゃんと見つめ直したい」って思ったのも理由ですかね。あと、家族のこともありました。実家に帰る必要性を感じるタイミングでもあったんです。

こちらがご実家でもある坂本さんの事務所前です。

ご家族のこともあったんですね。地元に戻ってからは、すぐによさこいの楽曲制作に携わり始めたんですか?

最初はバンド活動をしてたんですよ。音楽は続けてたけど、正直、地元で音楽だけで食べていくのは厳しいなって感じてて。でも、そんなときにたまたま「よさこいの曲を作れないか」って相談を受けたのがきっかけです。

最初は偶然のきっかけだったんですね。それがここまで広がるとは…。

本当に偶然でした。でも、よさこいの音楽を作るうちに「これ、めっちゃ面白いな」って思うようになって。それで今に至る感じです。

過去制作数250曲を手がける坂本さんが語る「よさこい音楽のリアル」

よさこいの曲作りと一般的な曲作りは全く違うんでしょうか?

全然違いますよ。よさこいの曲って、まずチームごとの「色」が大事なんです。その地域の話とか、伝えたいこととか、チームごとの熱量がすごくあるので、それを音楽に落とし込むのが楽しいし、逆に難しいんです。

チームの色を曲で表現するのって、どうやってるんですか?

最初はね、ヒアリングです。もうめちゃくちゃ聞きますよ。「どんなテーマですか?」「どんなメッセージを伝えたいですか?」とか。それで、「これでいけそうかな?」って方向性を決めていくんですけど、正直、まだ分からないときも多い(笑)。でも、やっているうちに「このチームならこういう音だな」って感覚が出てくるんですよ。

よさこいって地域のお祭りの一部じゃないですか。その文化を音楽で支えるって、めっちゃ素敵だと思います。

そうですね。よさこい自体が、戦後の高知で始まったお祭りなんですよ。何もない時代に「地域で一体になろう」って始まったのがきっかけで、それがどんどん全国に広がっていった。だからこそ、その地域の「らしさ」を曲に入れるのが一番大事なんです。


高知「よさこい祭り」にて制作された楽曲
こちらの曲が一番らしいらしいと語る坂本さん

でも、めちゃくちゃプレッシャーありそうですね。失敗できないというか。

よさこいの曲がスベったら、そのチームのモチベーションが下がるどころか、解散する可能性だってあるんですよ。「この曲で踊りたくない」ってなったら終わりですからね。だから、絶対外せないんです。

どんな人たちが踊るのか、どんな衣装を着るのか、どんな場所で演舞するのか。全部が曲に影響しますからね。

華やかな衣装と力強い踊りで魅せるよさこい

今までどれぐらいの曲をつくられるんですか?

よさこいの過去制作数は250曲ぐらいですかね。

250曲!その中で、特に印象に残っている曲やエピソードはありますか?

やっぱり賞を取った曲は印象的ですね。名古屋の「にっぽんど真ん中祭り」っていうよさこいの大きな大会があるんですけど、そこで作曲賞を3年連続で取れたのは嬉しかったです。最初は自分一人で作った曲、その次は後輩の仲間と一緒に作った曲、3年目はその仲間がメインで作った曲で賞を取ったんです。

3年連続で受賞って、すごい快挙ですよね!そのとき、どういう気持ちでしたか?

「これでバトンを渡せるな」って感じでしたね。

すって、すごくかっこいい…。(自分の役割を全うしたって感じなのかな…。)

3年目の受賞曲は、後輩が中心となって作ったんです。そのときに、「もう俺がこの役割を担う必要はないな」って感じたんですよ。若い世代に任せるタイミングが来たなって。これまで自分が培ったものを次の世代に渡していかないと、業界も文化も続かないですから。

なるほど…。次はどんなことを考えてるんですか?

次はね、アーティスト活動のような自分が作りたい曲を作りたいんですよ。チームの注文に応えるんじゃなくて、もっと自由に、よさこいをテーマにした自分の音楽を発信していきたい。まあ、それができるかどうかはこれからですけどね(笑)。

「常識にとらわれない音楽」若い世代と共に挑む新境地

先ほど言われていた自分の音楽を発信していきたいと言う気持ちは、いつ頃から芽生えたんですか?

ここ2~3年くらいですかね。特にコロナ禍が明けてから、「音楽ってただ飯を食うための手段じゃないな」と考えるようになったんですよ。「本当に自分の音楽で伝えたいことを表現していきたい」という思いが強くなったんです。

真剣に語る音楽への想い。取材中の一幕。

ステキですね。でも、音楽は目に見えない分、制作するのは大変なんだろうな…。

そうです。これまで自分がやってきた仕事、特によさこいの楽曲制作って、プレッシャーもあるけどすごくやりがいのある分野なんです。だからこそ、ずっと一人でやり続けるのではなく、次の世代に少しずつ仕事を渡していくべきだと思ってるんです

具体的にどんな形で仕事を渡していくんですか?

僕が受け皿になる形ですね。これまで積み上げてきた経験やネットワークを活かして、若い子たちに仕事の機会を提供したいんです。

なるほど。坂本さんが窓口になって、若いクリエイターにチャンスを広げていくんですね。

特に「飛翔NEXT」という自分がプロデュースしたイベントで出会った後輩たちには、そういうチャンスを作りたいと思っています。僕がその間に立つことで、スムーズに仕事が回るようにしたいです。


飛翔NEXT」坂本さんがプロデュースしたイベント

若い世代のどんなところに期待してますか?

常識にとらわれないところですね。今の若い子たちって、新しい視点で、音楽や表現を広げてくれるんじゃないかなって期待してます。

でも、若い人たちに教えるのって難しそうですね。

そうですね。僕は正直言って、教えるのが上手いタイプじゃないんですよ(笑)。自分が反骨精神でここまで来たタイプだから、「こうしろ」って言うよりも、背中を見せて「お前らも好きにやれよ」と言うタイプです。

“好きにやれ”と背中で示す坂本さん

最後に、これまで地元長浜で音楽活動をしてきてのお話もお聞きしたいです!

もっと音楽の可能性を地元の人に知ってもらいたいですね。例えば、地元の企業が自分たちのPRに音楽を使ったり、社歌を取り入れたり。そういう事例を増やしていけば、少しずつ需要も生まれるんじゃないかなって。

なるほど。地元での音楽の使い方を広げる必要があるんですね。

それと、地元の良さを音楽で発信していくっていうことも大事だと思います。地域に根付いた音楽を作ることで、「この土地にはこんな魅力があるんだ」って外に伝えられるし、それが新しい需要につながる可能性もあると思いますよ。

坂本さんとの取材を通じて、音楽がどのように生まれるのか、何より「その人やチームにしかない音」を紡ぎ出すために全力を尽くす姿勢が、印象的でした。

「こんな曲が欲しいけど、どう伝えたらいいかわからない」「大事なイベントで流す特別な音楽が欲しい」そんな悩みや想いがあれば、ぜひ坂本さんに相談してみてください!

まずは話をしてお互いを知ることから始めるのが大切です。予算感やできることはそこから話をして詰めていくことで、納得のいく形が見えてきます。

音楽が持つ力は大きく、時に人の心を動かす力を持っています。その力を最大限に引き出す音楽を坂本さんと共に作ってみませんか?

坂本さんへの詳細なご依頼やお問い合わせは、下記の電話からご連絡ください。

電話:090-2044-0701

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