不定期開催の「スナックわ」には長浜イチ多様な人たちが集まる理由があった
こんにちは!航海士のおばTです。
ここ最近、複数の人からあるスナックの噂を聞くようになりました。
「不定期で突然開店するスナックがあるらしい…」「どうやら長浜で一番幅広い人たちが集まっているらしい…」「人気で順番待ちらしい…」
この長浜で一体何が起こっているんだろう…?
好奇心旺盛のボクはいてもたってもいられず、噂の正体を突き詰めることに。ツテをたどっていくと、スナックのママである木村寛子さん(ひろこママ)とマスターを務める髙山徹さん(髙山マスター)に話を聞くことに成功。
- ・スナックを立ち上げるまでのひろこママの人生
- ・ママを支える髙山マスターの存在
- ・アイデアをカタチにするための人との出会い
車椅子ユーザーや視覚障がい者など、様々な背景をお持ちの方も集まる「スナックわ」には、ひろこママの夢が詰まっていました。
木村寛子/マルチスイッチ代表
長浜市出身。生まれつき脳性麻痺があり、現在は車椅子を使用。ピアカウンセラーとして相談支援事業所に20年勤務し、2020年3月に独立。誰もが持っている自分だけのスイッチをONにするという意味を持つ、障害者支援団体「マルチスイッチ」の代表を務めている。
髙山徹/NPO法人りんくす 相談支援事業所 ピットイン 所長
東京生まれ大阪育ち。大学卒業後、営業マンとして働きはじめる。1997年に障害者の入所施設「湖北タウンホーム」にて、介護等の仕事に従事する。現在は、障がいのある方の相談をしながら、地域をつくり耕す、役割もしている。
ひろこママと髙山マスターの出会い
ひろこママと髙山マスターが出会ったきっかけを教えてください!
髙山さんとは「湖北タウンホーム」という障害者の入所施設で、オープニングスタッフとして出会いました。
施設が開所されたのが1997年なので、25年以上の付き合い。僕が介護職で、ひろこさんは事務職として同時期に入社しました。
私は事務職で入社したんですが、当事者の立場から利用者さんとも関わってほしいって言われていました。
あるとき、利用者さんから「あなたにしかお願いできないことがある」って言われました。何だと思いますか?
なんだろう…
「へそくりを隠してほしい」って言われたんです。
え?どういうこと?
利用者さんは、自分では隠すこともできないしへそくりのことを誰にも知られたくなかったらしくて。そこで、生まれて初めて「あなたにしか頼めないことだから、お願いしたい」と言われたんです。
“へそくり隠し”の適任者…
これまで自分が頑張っても「あなたができるなら私にもできる」って周りから簡単に言われてきて、自分だけでできることは少ないと思っていました。
でも、へそくりをお願いされて「私にしかできないことがあるんだ」「私も役に立てるんだ」っていうのを初めて実感できたんです。
自己肯定感のパラダイムシフト…!
「自分にしかできない仕事なんだ」って思ったら、自己否定ばかりだったのが自己肯定に変わってきて。私にとって、考え方が好転する出来事でした。
当事者が当事者の支援をする「ピアカウンセラー」
ひろこママからいただいた名刺に「ピアカウンセラー」と記載されていました。詳しく教えてください!
ピアカウンセラーは、障がいを持つ当事者が当事者の支援をする仕事です。
支援費制度が大きく関わっているよね。
支援費制度…?
※支援費制度は「障がい者自らがサービスを選択し、事業者と対等な立場で契約を結ぶことにより、サービスを利用する制度」のこと。平成15年度に発足。
厚生労働省 「支援費制度の概要」より引用
支援費制度が発足して、どんな支援をしてほしいか自分で決めることになったんです。今までは全部のことを周りに決められていたので、いきなり「自分の意見を言ってね」と言われてもできないんですよね。
法律1つで生き方がガラッと変わる…
だからこそ、当事者に寄り添う仕事が重要になるんです。
(ひろこママの出番だ)
当事者が当事者のカウンセリングをしながら、本人の力を育てていく(エンパワーメントしていく)。支援費制度ができたことをきっかけに、事務職からピアカウンセラーに転身しました。
空白期間を経て、再びタッグを組むことに
お二人がタッグを組み始めたのはいつからですか?
ひろこさんがピアカウンセラーとして働き始めた1年後、ひろこさんが働く部署に相談員として異動しました。
僕は障がい者の方のお話を聞いて提案はできるんですけど、本当の意味で寄り添うことは難しくて。そこで、ひろこさんにも一緒に来てもらうようになったんです。
なるほど。役割分担はあったんですか?
ひろこさんが利用者さんの話に寄り添い、傾聴する。僕は相談を受けてコーディネートする、という役割分担が自然とできてきました。
ピアカウンセラーと相談員として長年一緒にやって来られた中で、ひろこママは2020年に独立されました。退職後も連絡を取り合っていたんですか?
2年以上連絡はとっていなかったですね。
2年以上…!(何かあったのかな。喧嘩とか?)
一緒に働いていたときに、彼女の良さを引き出せなかったことに負い目を感じていて。ひろこさんがファッションとかデザインのことを好きなのは知っていたのに、なかなか引き出せる環境を作れなかった。
独立後の活動については知っていたんですが、ひろこさんに対して申し訳ない気持ちがあって連絡ができなかったんです。
反省、後悔、葛藤。(喧嘩別れじゃなくて良かった…)
でも、僕も50代になって、地域にもっと貢献したいなという思いが出てきたんです。障がい者の方々と一緒に何かをしたいなと。そのときに、ひろこさんの顔が一番最初に浮かんできて。すぐにひろこさんに連絡しました。
「一緒にすることに決めた!」って連絡がきたんです!
相談ではなく、決定事項なんですね(笑)。
「一緒にしよう」でもなく、一緒にすると決めたので、そのままメッセージを送りました。
いきなりですよ(笑)。
連絡されたのはいつ頃ですか?
2022年の10月です。そこからひろこさんのご自宅でいろんな話をしました。とにかくアイデアを出しましたね。
実際に車椅子ユーザー目線の食べ歩きの企画とかもしましたね。
みんなでつくる「スナックわ」
スナックを開店する経緯についても教えてください!
2022年に「きものDE長浜」という、着物を着て長浜を散策するイベントがあったんです。着物を着ながら車椅子に乗って散策をしていたら「スナックのママみたい」って言われて。
髙山さんと話していくうちにスナックの面白さに気付いたんです。お酒を飲めば本音が出るし、みんなが思っていることを聞ける。
お酒がコミュニケーションの潤滑油に!
そもそも、長浜には車椅子でも行けるスナックが全然なくて。車椅子ユーザーが気兼ねなく行けて、同じ境遇の人たちと話せる場ができれば、一石二鳥どころか一石三鳥以上の効果があると思ったんです。
すぐにやると決めて、場所を探し始めました。
結果的に長浜カイコーでスナックを開店することになるわけですが、最初はスナックの場所として使えないと思っていました。
でも、ダメ元でカイコーの企画メンバーである石井さん(タカ)に相談することに。元々知り合いだったのと、石井さんから「いつでも相談してくださいね」と言われていたので、使えるかどうか聞いてみました。
タカさんの反応はどうでした?
「すごく面白い!やりましょう!」と言ってくれました。私たちのアイデアを受け止めてくれて嬉しかったです。
さすがタカさん!
画期的だなって思ったんです。お客さんの前に立つママがいて、ママを支えるマスターがいる。これは成立するなと確信しました。
スナックをやろうと思っても、絶対に一人ではできません。髙山さんをはじめ、みんなに助けてもらって協力してもらえるから、成立できる。スナックは“みんなでつくるもの”だと思っています。
「どうやら長浜で一番幅広い人たちが集まっているらしい…」という噂はホンモノでした。2022年11月に長浜カイコーで「スナックわ」のアイデアが生まれ、12月には第1回を開店。ひろこママの経験を反映させているスナックだからこそ、思いに共感した人が集まりました。
ひろこママ、髙山マスター、タカ、参加者のみなさん、それぞれにどんな気付きや変化が生まれたのか。
次回の記事では、幅広いバックグラウンドを持つ人たちが集まった「スナックわ」のリアルドキュメンタリーをお届けします!
「スナックわ」は長浜カイコーにて不定期で開店しているので、ぜひママやマスターに会いに来てくださいね。
長浜航海記・航海士。永遠の野球小僧。「長浜にはしばらく帰ってこーへん!」と言いつつ、23歳のときに爆速Uターン。以来、地元のことがちょっぴり好きになりました。野球と筋トレ、オードリーが好き