「長浜HEROES」が伝える、アメフト発祥の地である長浜の歴史とアメフト文化
こんにちは。おばTです。
ボクは小さい頃から野球をしてきたんですが、心から「楽しい!」と思えるようになったのは大人になってから。スポーツ少年団や部活時代は、しんどいことの方が多かった気がします。
だからこそ、スポーツ自体を楽しんでやっている子どもたちには「羨ましい」という感情があるんです。もっと純粋に楽しめていたら上手くなっていたかもしれないなと。
長浜には「ボクが小学生時代にこんなチームがあれば入っていたのに」という、素敵なクラブチームがあります。
その名も、小学生フラッグフットボール*チーム「長浜HEROES」。
2022年3月にチームを立ち上げて以来、学年や学校の垣根を越え、30名以上の小学生が集まっています。
少子化で子どもの人数が減っている中、なぜそんなにも人が集まるのか。何のためにクラブチームを立ち上げたのか。
長浜フットボールクラブ協会代表でもあり、長浜HEROESの代表でもある伊藤和真さんに、チーム立ち上げの背景や子どもたちに対する思いを聞いてきました。
*「フラッグフットボール」とは、アメリカンフットボール(以下:アメフト)が起源になって生まれたスポーツ。 アメフトの戦略性をそのままに少人数・少スペースで、安全に楽しむことができるように開発されたスポーツです。
「日本フラッグフットボール協会 ホームページ」より引用
伊藤和真|長浜フラッグフットボール協会代表
1978年、滋賀県長浜市生まれ。東海大学卒。地元JCで地域活動をする。2016年からNFLにハマり、ブログ「NFL超入門」を書き始める。長浜のアメフトの歴史を残したいと志し、日々地域活動を行っている。
また、伊藤さんは大正7年から続く建築屋「株式会社材光工務店」の代表取締役も務められています。
会社の代表がいち事業としてではなく、個人的な取り組みとしてスポーツに関わるという、熱い思いにも注目です。
体育館から賑やかな声が聞こえてくるな。どんな練習をしているんだろう?こんにちは〜。
初めまして!代表の伊藤です。
初めまして!体育館で練習されているんですね。
そうなんです。普段は長浜バイオ大学のグラウンドで練習しているんですが、冬場はグラウンド状態が悪いことが多く、今日は体育館で練習をしています。
外でやるスポーツの宿命ですね。今日は練習も見学させていただきながら、お話を聞かせてください!
よろしくお願いします!
長浜の歴史を残すためにチームを発足
まずはクラブチームを立ち上げた経緯を教えてください。
アメフト発祥の地*である長浜の歴史を地域に残すために、フラッグフットボールチームを立ち上げました。
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古くから繋いできた歴史を地域活性に繋げられたら良いなと思い、活動を続けています。
ボクも長浜出身ではあるんですが、長浜がアメフト発祥の地だとは知りませんでした。
*参考記事:滋賀県長浜市はアメフト発祥の地。中学タッチフットの試合変遷。
ちなみに、チームを立ち上げた時からこんなに人数が多かったんですか?
最初は13人からスタートし、1年目でなんとか試合にも出ていました。
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見よう見まねでやっていくうちに、だんだん子どもたちが友達を連れてきてくれるようになったんです。
信頼している人からの口コミが一番確実ですもんね。
今は30人以上のメンバーがいます。特徴的なこととしては、女子メンバーの比率が高いこと。長浜HEROESの場合、50〜60%が女子メンバーです。
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県内外にも同じフラッグフットボールチームがあるんですが、男女比が半々のチームはかなり珍しいんです。
男子の方が多いイメージだったので、見学にお邪魔した時から気になっていました!
また、1年生から6年生までバランス良くメンバーが所属しており、高学年と低学年の割合も大体50%ずつです。
めちゃくちゃバランスが良いですね。ほとんど同じ学校から来られているんですか?
長浜・米原・彦根の8つの小学校に通う子たちが集まっています。
普段通っている学校とは違うコミュニティになっているんですね!
自宅や学校以外のコミュニティに所属できる新鮮さは感じていると思います。
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湖北地域を中心に、さまざまな学校の子たちが増えているのは良い傾向だなと考えています。
一人ずつの個性が発揮できるスポーツ
人数が集まらないと嘆くクラブがある中で、着実にメンバー数が増えているのはすごいことですね。
クラブ立ち上げの時に「どんなクラブにしたいですか?」とよく聞かれたんですよ。
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僕は元々「勝つのが全てだ!」みたいなスポーツ根性が好きじゃなくて。スポーツ自体、遊んだり楽しんだりする感覚が大事だと思うんです。
ボクは“スポ根”で鍛えられてきたタイプです…。
「しんどいな、辛いな」じゃなくて「体を動かすのは楽しいな」と思ってもらいたい。
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力を合わせて上手くいった感動や快感を味わってもらえたら良いなと思っています。
スポーツ自体を「楽しい」と思えたら、どんなスポーツでも純粋に楽しめる力がつくんだろうなぁ。
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だからこそ、メンバーが自然に増えていくんですね。
子どもたちは中学校や高校に入っても、種目は何であれ体を動かすことを続けると思いますね。
走る・投げる・捕る、複数の動作を一度にやることで、身体能力が上がりそうですね。色んなスポーツに応用ができそう。ボクが小学生だったらやりたいなと思うぐらいです。
フォーメーションのことを「アサイメント」と言うんですけど、誰がどう動くかは事前に決まっているんです。
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子どもたちはまずアサイメントを覚えないといけなくて。
正直、見学をしているだけではルールが分かりませんでした。どんなスポーツでもルールを覚えないと、練習もできないですよね。
覚えたとしても、覚えた通りにみんなが動けるわけではありません。タイミングやスピード感の問題もありますし。
一人ひとりのレベルが高くても、タイミングが合わないと得点にはならないのか…。
全員がタイミングをそろえてアサイメント通りに動かないと、試合には勝てません。
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だからこそ、アサイメント通り前に進んで、タッチダウンが取れた時の快感は格別です。
野球とは違う快感があるんだなぁ。
野球やサッカーは一人の選手の実力が飛び抜けていれば、勝てることもありますよね。
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一方、アメフトやフラッグフットボールは足が遅かったり運動神経がそこまで良くなかったりしたとしても、一人ずつの個性が発揮できるスポーツなんです。
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みんなが輝けるのが面白さの一つですね。
違う能力の持ち主、一人ひとりがヒーローになれるスポーツ。それがアメフトだし、フラッグフットボール。男子でも女子でも関係ない、体を動かすのが得意、考えるのが得意、それぞれの違いが集まるから強い。
自分の個性がチームの一員になる、メンバー全員がヒーローなんだ。そんなイメージから、チームの名前を決定しました。
伊藤さんが代表取締役を務める「株式会社材光工務店」のホームページより引用
コミュニティの輪を広げていきたい
チームを立ち上げてから2年弱が経過しました。何か変化を感じることはありますか?
子どもたちは最初、フラッグフットボールのルールが全く分からない状態からスタートします。
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「5対5でやるスポーツなんだ」とか「最初にセットして1秒待たないとファールなんだ」とか、本当に一つずつ覚えていくんです。
プレーする中で自然と覚えていくこともあり、自分たちでプレーを考えられたりスポーツに対する理解度が深まったり、子どもたちの“考える力”は育ってきているなと感じますね。
練習中、メンバー同士で会話を重ねているのが印象的です。
保護者の方からは「子どもがフラッグフットボールを好きになっています」と言ってもらうことが増えました。
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他にも習い事をしている中で、土曜日の午前中に練習へ行くことが楽しみの一つだと。プレーするだけでなく、友達に会えることが楽しみになっているようです。
この雰囲気で練習ができるなら、積極的に行きたくなるのも分かります。
コーチと選手の距離が近く、楽しむことをメインにしているのが良い影響を生んでいるんだと思います。
子どもたちの表情から楽しんでいるのが伝わります。雰囲気が良いですよね。
また、外部からの変化で言うと「長浜HEROES」という固有名詞が少しずつ認知されているのを感じます。
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「長浜がアメフト発祥の地であることをみんなに知ってほしい」と発信を続けることで、口コミで広がっていきました。
長浜HEROESのことを知って、長浜がアメフト発祥の地であることを知る人もいそうですね。
今後やっていきたいことも教えてください。
今後もメンバーを拡大していきたいです。あとは、大人のネットワークを広げていきたいと思っています。高校生や大学生、社会人が関われる組織やコミュニティにしていきたいですね。
「アメフトをやっていたので手伝いたいです!」という声が上がるなど、輪が広がっていきそうですね。
長浜の中学校や高校のアメフト部の人数は減っているんです。人数集めに各指導者は困っている状況。
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小学校から中学校、高校をひっくるめて、フラッグフットボール協会やアメリカンフットボール協会で関わっていけたら良いなと考えています。
学校や学年を越えた連携を強化することで、コミュニティが出来上がっていくんだろうなぁ。
将来的には子どもたちをアメリカに連れて行き、アメリカの学校と交流してみたいです。
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子どもたちに一生の思い出を作ってあげたい。それが僕がクラブチームをやり続ける目的です。
長浜の文化を語り継ぎつつ、未来を担う子どもたちのチャレンジの場でもある。取材を通して、長浜HEROESが存在する意味や意義を感じとることができました。
文化の継承や人口減という課題を嘆いて、深刻に立ち向かっていくのではなく、楽しみながら人から人へ伝播していく仕組みをつくる。
部活動の地域移行なども議題に上がっており、長浜HEROESの取り組みを参考にしたいと思うチームや団体が現れることでしょう。
アメフト発祥の街、長浜からどんな歴史が積み上がっていくのか、今後の展開にも期待したいです。
お問い合わせは「長浜フットボールフラッグ協会」のホームページからご連絡ください。
長浜航海記・航海士。永遠の野球小僧。「長浜にはしばらく帰ってこーへん!」と言いつつ、23歳のときに爆速Uターン。以来、地元のことがちょっぴり好きになりました。野球と筋トレ、オードリーが好き