生徒数200名のアート教室。小学生が夢中にアートをする教室の裏側を教えて!
こんにちは。さわです。
お子さんの習い事が多様化する今、長浜市に生徒数200名のアート教室があるのはご存じですか?
幼児さんから大人まで幅広い方々が夢中になって通うアート教室「Nagahama art labo(アートラボ)」。
以前からNagahama art laboさんのお話を聞いていて、なぜ200名近くの小学生がアートに興味を持つのか、夢中になって活動できる理由は何なのか、ずっとフシギに思っていました。
私はふだん教室事業を営んでいるからこそ、聞きたいことがいっぱい。そこで、代表の松野さんの想いやNagahama art laboさんのこれまでを根掘り葉掘りお聞きしてきました。
松野智樹 | Nagahama art labo
ナガハマアートラボは、滋賀県長浜市にある古民家を改装したアトリエ。絵画教室・単発講座・アート制作・展示企画など芸術に関する事業を展開している。
目次
「広告はしない」口コミで200名集まる集客力
Instagramを拝見しました。たくさんのお子さんが教室に通われていると聞いたんですが、今は何名くらいの方が教室に通われているんですか?
今は大体200名くらいです。
200名。多くてびっくりしました!どのような方が通われているんですか?
年齢層としては、小学生が一番多いです。4歳から60代の方まで、幅広い層の方が通ってくれています。
幅広いですね!小学生が一番多いのは、何か理由があるんでしょうか?
通ってくれているお子さんの保護者さんが、口コミで広げてくださったのが大きいですね。保護者さん同士でお話されることも多いですし。
口コミだけ…!?
私も教室を運営しているのですが、毎回の集客に必死で…最初から集客は安定されていたんですか?
最初は20名くらいからスタートでしたが、毎年20~30人づつ生徒数が増えていきました。
コロナ禍では増加率が高かったです。
そうなんですね。当時はコロナ禍になって人の動きが止まってしまったことで、生徒数が減ったり教室運営が難しくなったりしたのかと思っていました。
動きが止まったことが大きな転機になりましたね。
どういうことでしょうか?
学校が休校になったタイミングで教室も休みにしたんですが、このまま止まっただけではマズいなと。何かできることはないかと考え、希望するご家庭に画材を届けて、オンライン授業や自宅学習の講座を始めました。休校にしてから2週間後にはその準備に取り掛かっていましたね。
2週間後に!スピード感と対応力がすごいですね。
コロナ禍はこどもたちのインプットが減ってしまってましたよね。アトリエでの授業を再開していく過程で、課題の多様性に需要があり、生徒数も増えたんだと思います。
夏のバスツアー、本物に触れる体験をする
普段、アートラボさんに通うお子さんたちはどんなことをされているんですか?
絵を描くだけではなく、いろんな内容を経験してもらえるよう、材料選びや課題設定をしています。
絵を描くだけではないのが、ポイントですね!
展覧会を定期的に開催しているので、展覧会に向けてアートを作る時もありますし、今年の夏はバスツアーにも行きました。
バスツアー!ホームページで拝見して気になっていました。
大型バスを借りて福井県に行って、アートの現場に触れる体験をしてきました。
福井県はアートが盛んなんですか?
福井県には伝統工芸の職人さんが集まる地域があり、今回は和紙と鉄鋼の2か所を周りました。
小学生で本物に触れることができるのは、貴重な体験ですね。
小学生たちも喜んで体験してくれただけでなく、職人さんたちも喜んでくれていたのが印象に残っています。伝統工芸について子どもたちに丁寧に教えてくださいました。
現地に行ったからこその体験と学びを得ることができそうですね!
はい。他のジャンルについても、また違う機会を利用して行けたらいいなと思っています。
子どもが夢中になれるアート教室の裏側
次の課題では「お店作り」をテーマにしようと思っています。
お店作り。どういうことでしょうか?
子どもの時にはおままごとをしますよね。
はい。私も小さい時はおままごとをして遊んでいました。
それを本気でやったら面白くないですか?
本気のおままごと。まだピンとこないです…
場所を借りて、そこに商品を置く机や、通貨も生徒たちで作るんです。内装やお店への光の入れ方も自分達で考えるデザイン課題です。店員やお客さんも自分達で体験できる、社会学習にもなる本気のアーティスティックなおままごとがやりたいんです。
うわぁ!とっても楽しそうです。子どもたちが自分で考えるきっかけを作れる課題設定ですね。
あと、僕が大事にしてることとして、「美術に触れる場所を面白くしたい」と思うんです
美術に触れる場所が面白い?もっと詳しく聞きたいです。
まず教室で行う課題について、僕自身が「(受講生と共にやる気持ちで)これがやりたい、こんな課題がきっと面白い」と思うことが出来ているかが大事で、そこを無理すると良い形にならないんですね。だからこそ、課題づくりはずっと悩んでますよ。
自分が面白いと思うことをする。お仕事へ前向きに向かう姿勢に憧れます。
以前ある生徒が「先生はやりがいとかあるの?」と聞いてきたことがあります。
やりがいか…松野さんはなんと答えたんですか?
僕はやりがいは意識していなくて、淡々とやるのが好きなんです。
淡々とですか?
そう、ずっと動き続けることが好きなんです。動き続けたことで前に進むこともあれば、うまくいかないこともありますが、動けば景色が変わるのでそれがいいと思っています。
うーん。わかったようなわからないような…
僕は心から楽しんで仕事がしたいと思うんです。自分が全力でぶつかっている姿を生徒の子どもたちにも感じとってもらえたら嬉しいですね。
松野さん自身が楽しんでアート教室を運営されているからこそ、生徒さんたちもいきいき活動できるんですね!
絵を描くことが好きでいつづけられるアート体験
Instagramや教室のレビューを拝見していると、小学生自身が楽しくやりがいを持って通われているイメージがありました。何か工夫されていることやこだわりはありますか?
みんな最初から絵を描くことは好きなんですよ。幼稚園の子の中には歌いながら書く子もいますよね。
私も小さい頃はよくお絵描きをして遊んでいました。
さわさんのように、根本的にはみんな絵を描くのが好きなんですよ。「好き」という感情を閉じ込めてしまうケースがあるだけで。
閉じ込めてしまうケース…。アートラボさんは元々持っている「好き」を発揮できる場所ということですか?
もちろんそれもありますが、「好き」は育てるものですから。最初のきっかけをみんな持っていて、上手くいく課題があったり、上手くいかない課題があったりする中で、続けていけば育っていくんです。
続けていくために松野さんがされていることはありますか?
どう評価してあげるかを大切にしています。
適切な評価は大事ですよね。松野さんはどのように評価されていますか?
単純に“上手い”や“下手”ではない評価軸を持って接しています。
絵を描くことが好きでいれる評価軸なんですね。
シンプルな絵を描くことが好きな子もいれば、油絵が好きな子もいるし、 可愛い色が好きな子もいるように、人によって好き嫌いは違います。だからこそ、課題を通して「自分が好きな絵は何か」や「得意な絵は何か」を見つけてもらいたいと思っています。
みんなで同じ課題に取り組むことで、人それぞれの個性が見えてくるんですね!
そうです。やりたいことしかやらなかったら、その子の価値観は広がらないので、好き嫌いで判断せず、いろんな課題を体験してほしいと思うんですよね。
自分の頭で考えられる人になってほしい
ホームページに「ただのお絵描き教室ではなく、子どもたちの未来に繋がるようにしたい」と書いてあるのを拝見しました。松野さんはアートラボの活動を通して、生徒さんたちにどうなってほしいですか?
自分の頭で考えられる人間になってほしいですね。
理由についても教えてください。
この変化の早い時代において、社会が変われば、僕も生徒の目標も変わっていくと思います。目標は変わってもいいんです。大事なのは、自分で考えられること。
ものすごいスピードで社会が変わるからこそ、自分で考えて選択できる力が必要だと私も感じます。
想像力や感性は、感動によって磨かれます。大人になってから経験することもできますが、いかに早い段階から感動する経験をして、自分の価値観を広げられるか。自分の頭を使って感性を磨く選択をしてほしいと思っています。
自分で考える力はこれからの時代を生きていく上でとても大切ですね。
総勢200名の生徒さんが集まるアート教室の裏側には、社会の変化を捉えながらも自身の楽しさを追求し、変化し続けた松野さんの行動力と熱い想いがありました。
私は今回の取材を通して、「自分が面白いと思うことをやり切る」という、1つの芯を通した活動をし続けている松野さんのお話を聞いて、私もこんな大人になりたいと憧れの念を抱きました。
アートラボさんのお教室が少しでも気になった方は、まずは体験から行ってみてください。
長浜航海記・船員。京都から長浜へ移住し、株式会社crevus designを設立。小学生向けの体験教室やデザインなどのクリエイティブ事業をしている人。ど根性地べた這いつくばって進むタイプ。