手描きから生まれるオリジナリティ!唯一無二のルポ&イラストレーターが誕生するまで
こんにちは。おばTです。
ボクは昔から絵を描くのが苦手で…。「自由に描いてみましょう」と先生が笑顔で言うたびに、自由ってなんだ、0から1を生み出すのは無理すぎる、と恐怖で震える学生生活を過ごしていました。
だからこそ、絵を描くことを仕事にされている方々に対する尊敬の念が人一倍強いんです。「絵を描くことを生業(なりわい)にするまでにはどんな過程があったのか」「どんな仕事内容があるのか」など、ボクの頭の中で考えていても、到底イメージは膨らんできません。
そこで「ルポ&イラストレーター*」として、新聞での連載や日本酒関連の仕事をされている、松浦すみれさんに話を聞いてきました。
取材を通して、ボクと絵までの距離がほんの少しだけ近づいた気がします。
*「ルポライター」とは、社会的な事象などを現地に取材して記事にまとめる人のこと。「イラストレーター」とは、イラストを描くことを職業としている人のこと。
松浦すみれ|ルポ&イラストレーター
京都生まれ。京都の〝お酒の神様〟を祀る松尾大社にて巫女として奉職後、現職。淡い水彩画に文章を綴ったイラストエッセイなど、新聞連載をはじめ、雑誌・WEB等に寄稿。2015年、酒蔵を巡り取材した書籍出版を機に、日本酒にまつわる講座やイベント、ラベル制作などに携わる。2022年、湖北にて移住者8人とイカハッチンプロダクションを設立し「サバイブユートピア」を出版。現在、滋賀と京都の二拠点生活。
<先に分かるデザイン発注のいろは>
松浦さんが制作された作品。
挫折をするも再び絵の道へ
小さい頃からイラストレーターを目指されていたんですか?
両親は2人とも絵を描く仕事をしていた影響で、私も小さい頃から絵を描くことが好きでした。
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小学生の頃の夢は「絵を描く仕事に就く」こと。自分は絵を描く仕事に就くものだ、と信じて学生時代を過ごしていました。
今のお仕事は昔からの夢を叶えられたんですね!
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学生時代についても教えてください。
高校時代は芸術分野に特化した人文芸術学科に進学し、歴史的な部分を掘り下げながら芸術について学んでいました。高校卒業後は美術大学のデザイン科に入学。
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しかし、大学2年生の時に母が病気で療養することになり、母の看病をするために休学。
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結果的に、大学4年生の時に中退しました。
大学を中退…。
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ボクも中退した経験があるのでイメージできるのですが、かなり大きな出来事だったのではないでしょうか?
大きな出来事でしたね。
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大学を中退したことで、絵を描くことに向き合うことが難しくなりました。絵を描くことが大好きだった自分にとって、大きな挫折を味わったタイミングです。
中退後はどうされたんですか?
大学中退後は松尾大社の近くの和菓子屋さんで働いていたんですが、ある時、松尾大社の神主さんから「巫女さんを探しているから就職しませんか?」と声をかけていただき、巫女さんになることに。
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高校生の時にアルバイトをしていたこともあったので、迷うことなく決断しました。
巫女さんとイラストレーター。正直、まだ関連性を見出せていません。
巫女さんとして数年働いた頃「やっぱり自分は絵を描くことを仕事にしたい」と思うようになったんです。
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そして、近くに美術大学があったので、社会人講座で学ぶことに。
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私はパソコンを使ってデザインするより「手で描きたい!」と思っていたため、社会人講座では日本画や水墨画を学ぶことにしました。
絵と距離ができたことで、思いが湧いてきたんですね。美術大学に入学後も巫女さんとして働かれていたんですか?
社会人講座で学び始めると同時に、巫女さんではなく事務職として働くようになりました。
ターニングポイントとなった書籍出版
イラストレーターとして仕事をされるようになるまでの経緯を教えてください。
私はイラストレーターだけでなく、ルポライターとしても仕事をしているので、両方お伝えしますね。
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出版社で編集者をしている学生時代からの友人がいて「絵だけじゃなく文章の才能もあるから、絵と文章の両方をやる方がいいよ」とアドバイスをもらったんです。
文章の才能もあったんですね!
読書感想文のコンクールで入賞するなど、文章も比較的得意でしたね。
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友人はずっと私のことを気にかけてくれていて、デザインの勉強を再開した後に、現場を取材して記事を書く、ルポライターの仕事を依頼してくれました。
ルポライター。具体的にはどんなことをされるんでしょうか?
当時はコミックタッチで、京都の歴史ある場所を訪ねて、体験談として気付いたことを描く仕事をしていました。その仕事が想像以上に楽しくて。
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家にこもり続けて絵を描くのは、私の性格に合っていないと思っていたので、現場に足を運んで取材を行うルポライターを仕事にしたいと思うようになりました。
事実をただ伝えるだけでなくイラストを入れることによって、知識がない人でも見やすい内容になりそうですね。
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書籍を出版された経緯についても教えてください。
自著「日本酒ガールの関西ほろ酔い蔵さんぽ」を出せたのも、松尾大社が大きく影響しています。
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この本は、松尾大社で個展を開いている時に出版社の社長さんが見に来てくださり「イラストを全面に出しながら、自分のキャラクターも出すような本を出版しませんか?」と声をかけてくださったことがきっかけで、出版することになりました。
日本酒ガール!キャッチーで分かりやすいですね。
日本酒は若い人に飲まれにくかったり、女性が一杯目から日本酒を頼むのを良いと思われなかったりする、日本酒に対する偏見をなくしたいと思っていたんです。
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全国各地にたくさんのイラストレーターがいる中で、他の人たちと差別化をしないといけない。そう考えた時に「日本酒ガール」として自分をPRしていこうと思っていました。
差別化をするために自分をどう売っていくか。一人のクリエイターとして参考になります。
名刺にも「日本酒ガール」と記載をしてから出版社の社長に出会い、日本酒に関する本を出版することになりました。
書籍を出版してからの反響はいかがでしたか?
出版以降、日本酒講師やNHKのカルチャー講座、講師の依頼やイベント登壇など、仕事の幅が広がっていきました。
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関西を中心に日本酒ガールが浸透し、メディアに呼んでもらうことが増えましたね。
オリジナリティが生まれる手描き
松浦さんが描くイラストの特徴を教えてください。
元々はくっきり描くイラストが多かったんですが、自分に合うイラストを模索した結果、顔彩*を使ったイラストを描くことが増えました。
*顔彩とは、顔料を使って作られた固形の絵の具で、水で溶いて使うもの。
松浦さんのイラストは優しい雰囲気のものが多いですよね。こだわりについて教えてください。
イラストを描き始めた頃から“手描きのタッチ”にこだわり続けてきました。
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便利なツールが出てきたとしても、自分の手で描き続けたいと思っています。他の人と差別化するためのポイントですね。
なかなか真似できない手描きだからこそ、“松浦さんらしさ”が出てきますね。
また、手を抜かないことと自分の絵を見下さないことも大事にしています。
「自分の絵を見下さない」とはどういうことでしょうか?
世の中を見渡せば、絵が上手い人っていっぱいいるじゃないですか。
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でも、上手いか下手かで判断せずに「松浦さんの絵が好きです」と言ってくださる方がいる限り、自分だけは自分のファンでい続けようと思っています。
「なんでこんな絵を描いているんだろう」と自分で自分の価値を下げることだけは絶対にしない、と最初から決めてやっています。
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自分で自分の絵を信じることがこだわりですね。
自分を信じるって簡単なようで難しいですよね。
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ボクの場合ジャンルは違いますが、どうしても周りの人と比べてしまいます…。
絵が上手い人と比べた時でも、自分にしかできないことって絶対にありますし、それぞれの良さがあるんですよね。そういう意味でも自分の強みを理解しておくのは大事だと思います。
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また、誰一人として同じ絵を描くことはありません。自分のオリジナリティを磨いていけたらと思っています。
松浦さんに仕事を依頼する場合の相談の流れを教えてください。
最初の相談はメールでいただくようにしています。メールで依頼内容を明確にすることで、お互いの意思疎通がスムーズになるので。
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もし直接会ってご相談いただく場合でも、後からメールで正式に依頼文をいただくようにしています。
文章に残すのは共通認識を作る上でも大事ですね。
最初の相談は、お互いが相手に何を求めているのかを明確にする大事なタイミング。
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連絡を密にとりながら、条件をすり合わせていきます。
制作期間はどれぐらいでしょうか?
私の場合、手描きであることもあり、ラフデザインを提出するまでに時間をいただいています。
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期間については、クライアントさんのご都合があるので、納品スケジュールをもとにラフの提出期限を決めていくことが多いです。
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そのため、最初の打ち合わせでスケジュールを確認させていただきます。
今後やっていきたいことはありますか?
今は複数の新聞で連載をさせていただいているので、連載を1冊にまとめた書籍を出したいと考えています。構成の部分からも関わっていきたいですね。
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あとは個展もやりたいです。滋賀や京都、大阪で個展ができればなと。自分が癒されるために描く絵をみなさんに見てもらえたら嬉しいですね。
唯一無二のイラストレーター。ご自身で努力されているのはもちろんのこと、周りの人とのご縁を大事にされている方ということが伝わってきました。
ボク自身も、松浦さんが大事にされている、自分が自分の一番のファンでいることを肝に命じて活動できるようにしていきたいです。
天才だから、最初からセンスがあるから、絵が描けるんじゃない。自分の強みを理解して行動し続けるからこそ、道が切り拓いていく。今後のイラストレーターさんへの見方が変わりそうです。
松浦さんへの仕事の依頼や詳細連絡はホームページからご連絡ください。
長浜航海記・航海士。永遠の野球小僧。「長浜にはしばらく帰ってこーへん!」と言いつつ、23歳のときに爆速Uターン。以来、地元のことがちょっぴり好きになりました。野球と筋トレ、オードリーが好き