起業率は10〜15%!3日間で“やりたい”を事業にするStartup Weekend 長浜

起業って、ごく一部の人がやるもの。
—— 2019年、会社員として働いていた頃の私は、そう思っていました。
しかし、今はフリーランスとして活動し、自分で仕事を選び、挑戦する日々を送っています。
振り返ると、5年前の私は「起業なんて特別な人のもの」と決めつけていて、挑戦する選択肢すら考えていませんでした。
でも、もし当時の私がStartup Weekend(以下:SW)長浜の存在を知っていたら、そんな思い込みはもっと早く崩れていたかもしれません。

SWは、週末の金曜夜から日曜夜までの54時間でアイデアをカタチにする実践型の起業体験イベント。経験やスキルを問わず、誰でも挑戦できる場として多くの起業家を生み出しています。
最初の一歩がなかなか踏み出せない気持ちを抱えていた会社員時代の私にとって、SW長浜のような場があることを知っていたら、もっと早く「やってみよう」と思えたんじゃないかと思います。
今回は、SW長浜のオーガナイザー(運営者)である藤居さんに、長浜で生まれた新しいチャレンジの形や、この場がもたらす変化についてお話を伺いました。
起業をお考えの方、「いつかやってみたい」と思っているなら、その「いつか」に少しだけ近づいてみませんか?

藤居 海好(ふじいみよし) | NPO法人StartupWeekend 理事
滋賀県長浜市出身。大学進学を機に上京し、本業のかたわら「東京-長浜リレーションズ」運営メンバーとして活動。特定非営利活動法人Startup Weekendのオーガナイザーを務め、長浜での起業支援や地域活性化に取り組む。
目次
起業文化を育む!Startup Weekendを地元・長浜でやる理由
初めまして!今日はお時間いただきありがとうございます。
こちらこそ、ありがとうございます!
早速ですが、「Startup Weekend(SW)」について教えていただけますか?
Startup Weekendは、世界150カ国1800都市で開催されている起業支援イベントで、金曜夜から日曜夜までの54時間でアイデアをカタチにするプログラムです。2007年にアメリカで始まり、日本では2009年から、長浜では2015年から開催し、今年で4回目の実施になります。

藤居さんがSWに関わるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
もともとは参加者として2014年に初めて体験しました。そのとき、ものすごく熱量の高い場だと感じて「ぜひ関わりたい!」と。
初めて参加したとき、どんな部分に魅力を感じたのでしょうか?
SWは、机上の議論だけではなく、実際にアイデアを形にすることに重きを置いているんです。「No Talk, All Action!」というスローガンがあるように、とにかく行動が求められる。また、参加者同士の熱量がものすごく高くて、一緒にいるだけで「何かできるかもしれない」と思わせてくれる環境だったのも大きかったですね。

ただ話し合うんじゃなくて、とにかく動いて形にしてみる。「自分にも何かできるかも」って思えるのも納得かも。でも、それだけ熱量が高い場に参加したら、ただの参加者としてじゃ物足りなくなりそう。
そうなんです。SWの運営は全世界共通でボランティアが担っているのですが、唯一のルールが「過去に3日間参加したことがあること」。私も条件を満たしたので、オーガナイザー(運営者)として関わることになりました。

運営を経験することで、新たに気づいたことはありましたか?
企画する側になって、一回限りのイベントではなく、コミュニティ作りの場であり、オーガナイザーはコミュニティリーダーにならないといけないことを実感しました。また、テーマによって参加者のカラーが大きく変わることや、地方と都市部ではSWの展開の仕方が異なることも興味深かったです。
運営を経験した後、「地元長浜でもやりたい」と思ったきっかけは何だったのでしょうか?
「地元で何かをやりたい」という気持ちがずっとあったんですよね。私は長浜出身で、高校まで長浜にいました。その後、大学で東京に行き、仕事の関係で一度滋賀に戻ってきて、また東京にいるんですが、長浜とのつながりはずっと大切にしています。

生まれ育った場所って、一度離れると余計に気になるというか、大切にしたくなるものなのかもしれないなあ。ずっと住んでると気づかない魅力もあるのかも。
2018年には、首都圏に住む長浜ゆかりの人が集まる「東京ー長浜リレーションズ」を市の方と一緒に立ち上げ、長浜に貢献できることを模索してきました。その流れの中で、「やりたいことがある人が、やりたいことを形にできる場所を作りたい」という思いが強まり、SW長浜を始めました。
自分のルーツを大事にしながら、そこで何かを生み出そうとする人がいるからこそ、地域って面白くなるんだろうな。
地方から持続的な起業を支援!長浜の独自制度『N-Lap』とは?
長浜には「N-Lap(長浜ローカルアクセラレーションプログラム)」(注1)という独自の取り組みがあると聞きました。これはどのようなものですか?
(1)読み方:エヌラップ
SWは全国で開催されていますが、長浜の特徴はアフターフォローの充実度です。SWに参加して「何か始めたい」と思っても、その後の継続が難しいことがあります。そこで生まれたのが「N-Lap」です。
せっかく芽生えた「やってみたい」という気持ちを、どう繋げるかって大事ですよね。
N-LapはSW終了後の2〜3ヶ月間、参加者を対象にメンタリングやレクチャーを行い、最終的には成果発表をする仕組みです。他の都市でもSWは行われていますが、こうしたフォローアッププログラムがあるのは長浜だけなんですよ。

ただ「やりたい」って思うだけじゃなくて、それを形にするまでの道のりを支えてくれる存在があるって、めちゃくちゃ大きいな…。
実際にN-Lapを通じて変化した参加者のエピソードはありますか?
ある参加者はSWでアイデアを発表したものの、そのときはチームが組めませんでした。しかし、N-Lapの期間中にブラッシュアップを重ね、最終的に地元企業と連携し、新たな事業を立ち上げることができました。
普通だったら「ダメだった」で終わっちゃいそうなところを、続ける仕組みがあるからこそ形になっているんだろうな。
地方開催が生み出す強いつながり!長浜で育まれるコミュニティ
都市部ではなく、長浜でSWを開催することで生まれる価値とは何でしょうか?
地方だからこそ、行政や地域の企業と連携しやすいのが大きなメリットです。例えば「こんな事業をやりたい」となったときに、市役所の方が「それなら〇〇さんがいるよ!」とすぐに紹介してくれる。場所の提供も柔軟で、「ここで試してみたら?」と無償で貸していただけることもあります。こうした支援体制は、都市部にはなかなかない強みですね。

行政の支援が手厚いんですね!他にも長浜ならではの特色はありますか?
もう一つの特色は、長浜出身の人たちが「地元のために何かしたい」と積極的に関わってくれることです。今、SWやN-Lapには、東京で活躍している長浜出身者もメンターとして参加してくれています。最初は外部の専門家を招いていましたが、最近では「長浜ゆかりの人たちだけで運営する」エコシステムができつつあります。

こうやって、地元を支える人が増えていくことで、長浜のエコシステムがどんどん強くなっていくんだろうな。
都市からの注目も集まっているのでしょうか?
参加者がイベントの経験をSNSで発信することで注目が集まっています。
単なる感想じゃなくて、SNSが次の動きを生むって面白いですね。
また、「この週末はどこでSWが開催されているんだろう?」と調べて長浜に来る人もいるんですよ。実際、横浜や東京からの参加者もいました。こうした流れをうまく活用すれば、長浜を「イノベーションが生まれる場所」としてさらに発信できると思います。
地方のイベントって、どうしても「地元の人向け」って思っちゃうけど、SWは外の人まで巻き込む力がある。こういう動きが続けば、地方でも挑戦できる場所って認識されるようになるかもしれないですね。
挑戦が根付くまち・長浜のこれから
SWを継続して開催することで、長浜の未来はどう変わっていくと考えていますか?
「やりたいことがあるけど、やり方がわからない」「仲間がいない」と感じている人たちの背中を押せる場にしたいですね。そして、長浜が「面白いことをやりたい人が集まるまち」として認知され、外からも人が来るような流れを作れたら最高です。今後もN-Lapと連携しながら、起業のハードルを下げる取り組みを続けていきたいと思っています。
本当に素晴らしい取り組みですね!今日は貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました!

Startup Weekend長浜は、単なる起業イベントではなく、地域活性化や若者の挑戦を支援する場として機能していることが分かりました。
N-Lapという独自のフォローアップ体制により、参加者の起業率を高め、長浜ならではのエコシステムを生み出しているのも大きな特徴です。
この仕組みを作ること、その仕組みを回しながら地元民も県外から関わる人も機運を高めていく雰囲気作りも、デザインされているものなのかもしれません。
「起業に興味はあるけど、何から始めたらいいかわからない。」そんな迷いや不安を抱えているなら、Startup Weekend長浜は大きな一歩を踏み出すきっかけになるはず。
地方だからこそできる強みを活かし、今後も長浜が「イノベーションが生まれるまち」として進化していくことに期待が高まります!
Startup Weekendは、小学生から大人まで誰でも参加できるイベントです。2025年は長浜で8月頃の開催を予定しています。興味のある方は、ぜひ参加してみてください。

長浜航海記・船員。彦根出身。彦根城の石垣のようにガッチリした情熱を持つ。スーパーの催事場で地元の飲食店が出店しているのを見て、「これは美味しいものを広める使命だ!」と勝手に決意。以後、地元の魅力を発信するライターとして活動。