VOYAGE RECORD

船員の航海記

予想外のアイデアで人の行動を変える。デザインで課題を解決する「デザインジャック」

こんにちは、船員のゆかりです!

先日、長浜駅前にある「えきまちテラス長浜」を通りかかったら、なんだか怪しいボックスを発見。

中に人がいて、ノリノリで音楽をかけています。気になる…

すごく怪しい。でも絶対に何かある…

気になりすぎて長浜航海記の情報網をフルに使って調べたところ、若手のイラストレーターやデザイナーがタッグを組んで、クリエイティブの力で町の課題を解決する集団「デザインジャック」にたどり着いたのです。

取材後にみんなで撮ったプリクラ(一番下が私です)。さて、どうしてこうなったのでしょう?

このボックスにどんなクリエイティブの力が?隣にあるイラストも気になる…ということで、メンバーのみなさんにお話を聞いてきました!

カメラを向けると、元気に「ヤー!」とポーズを決めてくれました!

「デザインジャック」プロジェクトメンバー

左から、ライターで役者のゆうまさん、地域おこし協力隊のかほさん、デザイン発注のいろはにも登場してくださった、Webデザインや小学生向けの体験教室を行う株式会社crevus design代表のさなさん、メンバー外ですが施設を代表して来てくださった「えきまちテラス長浜」総務企画部長の北村さん。

若手クリエイターの思いと、町の課題がマッチして生まれた企画

お話を聞くために向かったのは、まさにボックスが展示されている「えきまちテラス長浜」

早速ですが、ここの2階にあるボックス?展示? は、みなさんが作ったんですか?

はい。あれは私達が作った「ラジカセプリクラ」です。
2024年の11月からやっている「びわこにこんなヒトいるよね展」の一部なんですよ。

ラジカセ…びわこ…いろんな情報が一気に。
そもそも、なぜ「びわこにこんなヒトいるよね展」をすることになったんでしょう?

聞けば何でもハキハキ答えてくれるさなさん。すごく話しやすい

実は私も長浜航海記で記事を書いたことがあって、サイトを見るとわかるように、長浜にはクリエイターがたくさんいるんです。

そうですよね、私もびっくりしています。

だからもっと長浜にデザインの考え方を普及させたいと思っていて。
私は「株式会社crevus design」という会社をやってるんですが、夜な夜な事務所に同世代のなんか変なことをやってる人たちが集まってくるんです。

「変なことをやってる人」と言われても穏やかな笑顔でスルーするかほさんとゆうまさん

その仲間で何かできないかな、と思ったのが、チーム「デザインジャック」ができたきっかけです。
合言葉は「デザインでジャックする」

かっこいい!じゃあ、えきまちテラス長浜を「デザインでジャックする」ことになったきっかけは?

えきまちテラス長浜の北村さん。若者達を見守る視線が優しい

えきまちテラス長浜は、琵琶湖にも黒壁にも近い、周遊の拠点になる施設です。
でも、すぐそこに琵琶湖が見えているのに「琵琶湖に近い」と思われていないのが課題で。
若い人にもっとこの場所を活用してほしいとも思っていたので、彼らに「この課題をデザインで解決してもらえませんか?」と投げかけたんです。

さなさん達の「長浜にデザインを!」という思いと、施設側の「若い力で課題を解決したい」という考えが見事にマッチしたんですね!

みんなで迷走。ボツの連続で大ピンチ!

次はいよいよ「何をしようか」という話になるわけですね。

まずは現場を把握しようということで、改めてえきまちテラスに来てみました。
まわりを見渡したら「琵琶湖もうここやん!」ってことに気付いたのをヒントに、プロジェクト名を「BIWACOCO(ビワココ)」に決めました。

仕事が終わった夜に集合しては、閉店しているえきまちテラスを覗きに行っていたそう

そこからは、メンバーみんなで夜中に集まってひたすらアイデア出し。

私は、豊公園にいる猫達のプロフィールを1匹ずつ作って、言ってそうなことをアフレコして「豊公園の猫展」をしようって提案しました。

なるほど。みなさんはそれを聞いてどう思いました?

へぇ…って。彼女、猫の話になると熱くなるので。

夜に集まり、アイデアを出しまくるミーティング。煮詰まりすぎて朝になることもしばしば

他に出たのは、「琵琶湖まで何歩?展」。えきまちテラスから琵琶湖まで歩いた人達の歩数を展示して、「あなたは何歩?」って琵琶湖に誘導する企画です。

なんか今の展示内容とぜんぜん違いますね…もしかして、迷走してました?

プレゼンに臨むデザインジャックのメンバー達

とにかく「琵琶湖」っていうキーワードが頭から離れなくて。なんとかしぼり出した10案を北村さんにプレゼンしたら、「いいんだけど、おもしろくはないよね」ってバッサリ却下されました。

どこかで聞いたことがあるような、ありきたりな案が多かったんです。「ジャックするぞ!」って意気込んでるわりに守りに入ってる感じ。

これは完全に私が悪いんです。その頃、ちょうど個人的に仕事がうまく行ってない時期で。尖ってる場合じゃないわ…って落ち込んだりしてて。
プレゼンしては却下を繰り返してたら、いつの間にか会期まであと3週間!みんなで集まっててもラチが明かない!と追い詰められて、役割分担を決めたんです。

さなさんは全体統括、かほさんはサポート役、ゆうまさんはサポート役兼ライターなど、役割を明確にしました

それまでは「みんなでやろう!」という思いが強くて、何もかも全員で進めようとしてました。
でも、統括の私が全体のイメージを作って、それをサポートの2人がクリエイター達に落とし込んで制作していく形に変えたんです。

展示の内容が「びわ湖にこんなヒトいるよね展」に決まったのもこの頃だったよね。

みんなでやるのは大事だけど、あえて役割をはっきり分けたことでいろんなことがバシッと決まり始めたんですね。

テーマは「エモい」。Z世代に刺さる展示とは?

琵琶湖のあるあるを集め、AIで画像生成した「びわ湖にこんなヒトいるよね展」

これ、おもしろくて展示だけじゃなくインスタに上がってるのも全部見ちゃいました! 

ありがとうございます!見た人がクスッと笑えるように、ちょっとシュールなあるあるネタを出し合って絵にしました。AI画像ならではのNG集もあって…

AIに「琵琶湖沿いで犬を散歩している人のリアルでシュールなイラストを描いて」と指示したら、スーツを着た犬とのっぺらぼうの飼い主が爆誕

めっちゃ怖い!「びわ湖にこんなヒトいるよね展」を中心に、他にもいろいろ展示されてますね。

こちらはゆうまさんが企画した「バズり川柳」。「琵琶湖と人」をテーマに公募した川柳に、来場者がハートのシールで「いいね!」します

私は俄然、「ラジカセプリクラ」が気になってます!

ラジカセプリクラはプリクラ機とDJブースが一緒になっていて、会期中は私が中でDJをしてました。

ボックスの中は左側がDJブース、右側が撮影スペースになっていて、撮影中はDJが「かわいいね〜!」と盛り上げてくれます

撮影したら、デザイナーがどんな雰囲気にしたいかを聞いて、その場で落書きして完成データを送ってくれるんです。せっかくなので、あとで撮りましょう!

ここで再び取材後に撮ったプリクラ。「長浜らしさ」をオーダーしたら、長浜城を添えてくれました

中日新聞や読売新聞が注目して、記事にしてくれました
会期2日間で300人ぐらいの人に来てもらえて。全体のテーマは「平成エモすぎ展」。平成の懐かしさや、あるある現象、なんかいいよね!ってなる共通の感覚。Z世代が興味を持ってくれるのはそういう「エモい展示」なんじゃないかと想定して考えました。

反応はどうでした?

長浜に遊びに来た子達が「琵琶湖ってこんなに近いの?じゃあ行ってみます!」と言ってくれたり、地元の人からも「歩いて琵琶湖に行くって考えたことなかったけど、行ってみようかな」と言ってもらえたり。デザインの力で人の行動を変えられるんだ、と実感できてすごく嬉しかったです。

地元のおじさんで「僕も昔はこのあたりでデザインの仕事をしてたんだよ。だから若い世代がデザインで地元を盛り上げてくれているのは本当に嬉しい!長浜の未来は明るいな~」って言ってくださる方がいて。1時間くらい話し込んじゃいました!

Z世代だけじゃなく、いろんな世代の地元の人にも喜ばれる展示になったんですね。

「平成エモすぎ展は、私自身もやっていてすごく楽しかった!」と話すかほさん

人が行き来する場所なので、懐かしい音楽や、ぱっと見て「何これ!?」となる展示など、瞬間的に人を惹きつける仕掛けって大事だなと学びました。

プリクラを取り入れて、“お客さんが主人公になれる展示”にできたのがよかったなと思います。
デザインジャックとしては、トップダウンじゃなく“チーム”としてみんなで同じゴールを目指すために、役割分担も見直しながら走っていきたいです。

デザインと何かを掛け合わせて新しいものを生み出したい

今年の3月に、さらにバージョンアップした展示を開催する予定です。

次もあっと驚くような企画を期待してますよ。

デザインジャックのこれからについても聞かせてください。

現在デザインジャックのメンバーは7名で、みんな20代だそう!

デザインジャックとしては、流行りの歌を題材にしたショートドラマを演じたり、音楽ライブに出たりもしているんですよ。そんな風に、いろんな分野とデザインを掛け合わせて新しいものを生み出していきたいと思っています。

僕はデザインもイベントも大好きなので、それらを通じて町の課題を解決するってすごくワクワクします。見に来てくれる人はもちろん、コラボ相手や仲間になってくれる人をもっと増やしていきたい。

メンバーは、今も募集してるんですか?

もちろんです。
クリエイターに限らず、「楽しそう」「一緒にやってみたい」と思ってくれる人なら大歓迎

定期的に交流会や勉強会もしているので、ぜひデザインジャックのインスタを見て参加してください! 

若者のアイデアで、新しいワクワクがたくさん生まれていきそうで本当に楽しみです!
デザインジャックの自由な発想とデザインの力で、地元の人も他から来た人も「長浜っておもしろい!」と思ってくれるような動きをどんどん作っていってください!

駅前に突如現れた「ラジカセプリクラ」をきっかけに、長浜で動き出した若者達のパワーを感じた取材でした。

「デザインで人の行動を変える」っておもしろいし役に立つし、動かされた人も結果的にはハッピーだったりして、これからの時代にものすごく合っている考え方だなと思います。

遠いと思っていた琵琶湖が実は近かったことに気づく、こんな風に一瞬でものの見方を変えるデザインの力ってすごい!

えきまちテラス長浜で開催される展示の続報、デザインジャックの活動は、デザインジャックのインスタグラムをチェック!次はどんな課題をデザインで解決してくれるのか、これからの活躍が楽しみです。

デザインジャック Instagram

BIWACOCO Instagram

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