VOYAGE RECORD

船員の航海記

地元愛が生みだす独自の世界観。若手イラストレーターがアートで目指す未来とは?

早速ですが皆さん、長浜のような地方都市から、しかも若い年齢でクリエイターとして挑戦するなんて、本当に勇気がいることだと思いませんか?

大都市のように認知度を一気に広げるチャンスが多いわけでもないし、競争相手が多い環境とはまた違った難しさもきっとあるはず。

そんな中、“長浜出身の若手クリエイターが10月に個展を開く”という噂を耳にして、気になりすぎて早速足を運んでみました!

一体どんな作品が展示されているんだろう?どんな思いで活動を続けているんだろう? 

いろいろな期待と興味を胸に訪れたその場所には、鮮やかな色彩や個性的なデザインが広がる、想像以上にアツい世界が待っていました。

今回は、その個展を開いたイラストレーターKumaさんに直接お話を伺いながら、地方発のクリエイターとしての挑戦や、作品に込めた思いについて深掘りしていきます。

地方からスタートしても、こんなに自由に、こんなに楽しそうに活動できるんだって、きっと誰もが元気をもらえる内容になっていますよ!

BIG BEAR / Kuma |イラストレーター

2000年生まれ。大学まで野球一筋。親戚のイラスト活動を見て創作の道へ。感動を与える作品作りを目指し、活動を開始。見る人に新たなきっかけを与える作品を、一心に描く。

<先に分かる「デザイン発注のいろは」>

<個性が炸裂するKumaさんのアート作品>

コロナ禍がきっかけで開花したイラストへの情熱

改めてですが、Kumaさんの活動内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか?

はい。日中は金属加工工場で働いて、イラストレーターとしての活動は工場で働いた後に夜遅くまで描いたり、休日に制作をしたりしています。

Kumaさんはどうして工場仕事とイラストレーターの両立を選ばれたんですか?

僕の日常は仕事を終えてからがイラストレーターの時間で、夜遅くまで描いているんです。工場での仕事が終わる17時過ぎから、家に帰って夜の22時頃まで、そして時には朝まで。これが僕にはちょうどいいんですよ。

それは大変ではないですか?

実は、工場仕事も絵を描くのも、どちらも楽しんでいるんです。 確かに、独立すれば時間はたくさん取れるよとよく言われますね。でも、負担には感じませんし、逆にエネルギーをもらっています。絵が売れたときの収入は、また新たな作品作りに投資できるので、結果的にはすべてがプラスに働いています。

あと気になっていたのが、「BIG BEAR」はどういう由来からなんでしょうか?

中学の頃、音楽アーティストに憧れていて、自分なら何かなって考えたんです。名前がクマガイだから、自然と「BIG BEAR」となりました。

「BIG BEAR」はとても印象に残る名前ですし、Kumaさんにピッタリですね。

「Kuma」というのは、中学のころから友達にクマって呼ばれていて、それで。僕的には、肩書きがBIG BEAR、アーティスト名がKumaです。

イラストを始めたきっかけは何だったんですか?

大学時代に部活がコロナで休みになったんです。そのときに初めてiPadを使ってみたんですよ。それがすごく楽しくて、本格的にイラストを描き始めたんです。元々小さい頃から絵を描くのが好きでした。

iPadでアートに命を吹き込むKumaさん

小さい頃から好きだったことが、こうして形になっていくのって、素敵ですね。絵を描く楽しさが、Kumaさんのエネルギーになってるのが伝わってきます!

iPadとポスカが生み出す、唯一無二のスタイル

イラストはどんなスタイルで描いているんですか?

最初はただ自分が好きなものを描いていたんですけど、今はアメリカンポップカルチャーに強く影響を受けて、特にキャラクター系の絵が得意ですね。スポンジボブとか、ポップでカラフルなスタイルが好きで、それが自分の絵にも現れています。またメルト(溶けるような表現)もよく使っています。

Instagramより @big_oekaki

基本はiPadで書かれているのでしょうか?

今はiPadと、ポスカで。iPadだけだとちょっと満足できなくなってきて。

手描きの温かさを感じるポスカの花々に囲まれたアート

ポスカの滲んだ感じとかもすごい…。

ポスカは水性なので線で描くのではなく、チョンチョンって。ポスカだけでもいろいろ工夫したら描けます。デジタルよりも制作時間はかかるけど、綺麗なのはやっぱりポスカ。その分、原画になると時間がかかります。

iPadで制作された、グラフィティ風のカラフルなデザイン

具体的な制作時間はどれぐらいなのでしょうか。

よっぽど複雑じゃなかったらデジタルは1日で終わります。気持ちが変わっちゃうと気分も乗らないんで。土日の丸一日ある時間を使って描いていますね。

作品に対する情熱が感じられますね。一日で完成させるのは、集中力が要りそうです。

会話をヒントにしたアートがここに。感性が光る作品。

Kumaさんの創作におけるインスピレーションの源は何ですか?

絵のヒントは、よく友達との会話から得ています。特に、失恋の話なんかを聞くと、すぐに絵にしたくなるんです。たとえば、「浮気された」とか「ふられた」みたいな話は、絵にするのにすごく刺激になるんですよ。

描くことで、その人の気持ちに寄り添える感じもします。

他には、「ドクロがかわいいな」とか「この色いいな」と思ったものをそのまま形にすることもあります。たとえば、さっき言ってたお花の絵も「これ、いいな」って思ったのが始まりです。かわいい系だとお菓子を描いたり、景色を描いたりもしますけど、わざわざ探しに行くというより、普段の生活の中で目に留まったものから拾ってくる感じですね。

身近なものからインスピレーションを拾えるのって、日々の観察力がすごいからなんだろうなって感じます。

パッと思いついたらすぐ下書きをして、それをトレースしてiPadで描き上げる、そんな流れで作っています。

展示会で見えた地元の応援と創作への土台

展示会を開催されたときの反応はいかがでしたか?地元の人々の反応も聞かせてください。

展示会は思った以上に反響が大きくて、特に最初の展示会(2024年4月)では、2日間で840人もの来場者があり、その熱意には本当に驚かされました。地元でこんなに支持されるとは思ってもみなかったし、その声が次への大きな励みになっています。

来場者の想いが詰まった、世界に一つだけのアートバナー

840人ってすごいですね!地元の皆さんの応援があってこそですよね。展示会を手伝ってくれた方たちもその熱意に影響されたんじゃないですか?

手伝ってくれたのは友達や後輩たちで、高校時代から仲のいいメンバーが多いんです。本当に熱心で、僕が引いちゃうくらい全力でサポートしてくれるんですよ。前回10月の個展のときも、そんな仲間の力にすごく助けられました。

Kumaさんと支えてくれた仲間たち、チームの絆を感じる瞬間

大都市と違って、長浜での創作活動にはどんな利点がありますか?

そうですね。僕にとっては、自分のペースで描けるのが一番の利点です。大阪に出たらどう?って言われることもありますけど、行ってみるとみんな競争してる感じがあって、正直、それが僕には合わないんですよ。長浜だと良くも悪くも刺激が少ない分、自分のペースを崩さずに作品を作れるんです。

競争の中で追い込まれるより、自由に好きなものを作れる環境が大事なんですね。じゃあ、長浜の方がKumaさんのスタイルには合っている?

はい。時間の流れがゆっくりしているのが本当に合ってます。部屋にこもって好きなものを好きなように描いていられるのが、僕にとっては一番の幸せですね。ただ、正直言うと、もっと自分の作品を広げていきたいという気持ちもあります。長浜でしっかり根を張りつつ、地元だけにとどまらず、外にも発信していきたいですね。

地元長浜で他のアーティストとの交流はありますか?

長浜にはあまりイラストレーターがいないのが実情です。ですが、消しゴムハンコを作る叔母がいて、多くのインスピレーションを受けています。また、株式会社crevus designの澤さんとは、異なる分野ですが交流がありますね。

互いに刺激し合える関係って、作品作りにすごく良い影響を与えそうですね!

大きな視点で見ると似ている部分も多く、お互いの作品について話し合えるのはすごく刺激になります。ただ、もっと多くのクリエイターと繋がれる環境があればと思うこともあります。

Kumaさんが描いた叔母さま
(いとうまきさん:@makihanco)の似顔絵

具体的にどんな形で繋がれる場が欲しいと感じていますか?例えば、イベントやコラボレーションの場とか…?

そうですね。自分がどのくらいのレベルにいるのかって、周りと話して初めて見えてくることもあるので、コラボはどんどんしていきたいです。さわさんや叔母みたいに、すごい作品を作る人たちを見ると「もっと頑張らないと!」って気持ちになりますね。負けてられないというか。

これから長浜でどのようなアート活動を展開していきたいですか?

地元の人だけじゃなくて、外から来る人にも楽しんでもらえる場所を作りたいですね。あとは、イラスト仲間ともっと気軽に繋がれたらいいなって。真面目な話というより、「こんな気持ちで描いてるんだよね」とか、感覚を共有し合えるような感じが理想です。

長浜から世界へ!BIG BEARの描く次なるステージ

今後の展望を教えていただいてもよろしいでしょうか?

これからはイラストレーターとしてもっと成長して、いろんな人に声をかけてもらえるようになりたいです。アパレルとか、絵をデザインに取り入れる場が増えると面白いって言ってもらうこともあって。自分の作品を形ある物にしていきたいですね。

自分の作品が生活の中に溶け込むような形になると、また違った楽しさや広がりが生まれそうですよね。例えば、具体的にやってみたいことはありますか?

そうですね。今年は長浜を拠点に活動して、地元で個展を開くことに集中しました。でも、次は県外、そしていずれは海外にも挑戦したいと思っています。ただ、いきなり大阪や東京で個展を開いたとしても、見る人の目も厳しくなりますよね。だから、まずは知名度を上げて、作品の質や表現の幅を広げてから、外の世界に挑戦していきたいと考えています。

長浜での活動と外の世界では、やっぱり求められるものが違うんでしょうか?

長浜では地元の人たちが優しくて、評価してくれる方も多いんです。でも、外に出ると当然、見る目も厳しくなると思います。だから、一度自分の基盤を見直して、もっと確かな土台を作ることが大事だなと考えています。しっかり準備して挑戦すれば、結果が出るはずだと信じています。

すでにコラボもされているって聞きましたけど、どんなお仕事だったんですか?

岐阜県のアパレルブランドとコラボさせてもらったことがあります。前回10月の個展では、そのブランドさんがワッペンを無償で作ってくれたんですよ。その方にはすごく評価していただいていて、「もっと上を目指せるはずだよ」って言葉をいただけたのが、すごく励みになりましたね。

Kumaさんの個展グッズ、コラボワッペンも

「もっと上を目指せる」という言葉、すごく重みがありますね。

県外、そして全国的に自分の作品を見てもらえるようになりたいですし、アパレルの仕事にも挑戦したい。そしていずれは海外にも作品を届けたいと思っています。行けるところまで、挑戦していきたいですね。

〈BIGBEAR制作事例〉

結婚式のウェルカムボード
長浜おさんぽマップの制作

長浜という場所には、どこかほっとする優しさがあって、それがKumaさんの活動を支える大きな土台になっているんだなと感じました。

地元の人たちの温かい応援や、展示会に足を運んでくれる方々のリアクションが、Kumaさんの自信につながっているのは間違いなく、でも、そこに甘んじることなく、その優しさをエネルギーに変えて、もっと外の世界へ、自分のアートを届けていこうとしています。

自信を糧に新たな世界へ踏み出そうとする姿勢に、私も学ぶところがたくさんありました。Kumaさんのこれからの活動が、長浜だけでなく、県外、そして海外へとどんどん広がっていくことを楽しみにしています!

Kumaさんへの詳細なご依頼やお問い合わせは、下記のSNSからご連絡ください。個人の方からのイラストやデザインのご依頼、また法人のお客様からのロゴ制作や商品デザイン、コラボレーション企画など、幅広いニーズに対応可能です。お気軽にお問い合わせください!

Instagram:https://www.instagram.com/big_oekaki/

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