地域のおじいちゃんが残した“やりたかった”を未来に繋ぐカルタ!むくる余呉湖で描く未来
こんにちは!さわです!
今は会社を設立して、教育とクリエイティブの事業をしている私。
きっかけは大学生3年生の時(5年前)に設立した、教育コミュニティです。
当時はオンライン上で300名を超える方が「教育」という言葉で集い、想いや考えを毎晩のようにシェアしていました。
人と人が想いで繋がる。
1人ではなし得ないことも、コミュニティのみんなとなら乗り越えることができます。
ある日、SNSをみていると…
武蔵野美術大学の学生が、カルタを作るプロジェクトを余呉地域で行っていると拝見しました。
どうやらこのカルタは、地域の新たなコミュニケーションツールになり得るらしい。
コミュニティ好きの私は、誰がどんな想いでこのカルタを作っているのか、カルタでコミュニケーションってどういうこと…?聞きたい!知りたい!という気持ちがフツフツ…
ということで、むくる余呉湖のプロジェクトに潜入してきました。
今回お話を伺うのは、武蔵野美術大学の学生 鈴木かなほさんです。普段は同大学のクリエイティブイノベーション学科で、アートやデザインを社会にどう生かしていくかを勉強されています。
鈴木さんは、産学連携プロジェクト*という授業の一環で2023年の9月~10月の1ヶ月間、長浜市の余呉地域を訪れました。実際に余呉地域で生活をする中で「水」について自分たちの考え方はどう変わっていくかの研究をされました。
※ムサビの産学連携プロジェクトとは….
武蔵野美術大学・造形構想学部では学部3年生と大学院生(有志)を対象に産官学共同プロジェクトを実践的な教育研究の場として捉え、授業内外で企業や地方自治体、諸団体と連携した取り組みを必修授業として実施している。
鈴木 かなほ | 武蔵野美術大学 学生
神奈川県出身、人と人との輪やつながりの間を繋ぐデザインを勉強中、長浜市が大好き
目次
カルタの元は囲炉裏。地域と本気で向き合うきっかけは失敗から…
こんにちは〜!よろしくお願いします。
こんにちは!
SNSでむくる余呉湖の活動について拝見しました。でも具体的にどんな取り組みかまではわからなくて…教えてください!
むくる余呉湖はいわゆる“地元カルタ”です。地域の伝統とか、地域ならではのあるあるを集めたカルタを小学生の時にやりませんでしたか?
やりました!楽しく地域のことが知れるので、社会科の勉強にも使っていました。
そんな地元カルタからインスピレーションを受けて、余呉のさまざまな人に出会う中で、もっとこの人たちの想いを紹介するものを作りたいと「余呉ver.の地域カルタを作ってみよう!」とプロジェクトを進めていました。
でも授業の最初のアイデアは囲炉裏だったんです。余呉の民話を語る民話語り部会の方と出会った時に、民話を語る隣に囲炉裏があったんです。「囲炉裏なんかいいね」とチームで盛り上がって…
とりあえず、手を動かして作ってみることにしました。
囲炉裏のどこがいいなと思ったんですか?
余呉は寒い地域で、冬は外出がへるようです。そんな住民たちが囲炉裏を集いの場として囲むことで、新たなコミュニティの場になるのではないかと思いました。
民話語り部会にあった囲炉裏は模型で火はついていなかったので、本物の囲炉裏を作って火を囲みながら民話を語ったら、もっと雰囲気が出るんじゃないかと考えてよそ者感満載で作りました。
確かに、囲炉裏って雰囲気があっていいですよね!囲炉裏からどうカルタになったんですか?(共通点が見当たらない…)
囲炉裏を作った後、産学の先生方から「ただ囲炉裏を作って置いていくだけは危険。ずっと余呉に住んできた町の人にとってそれは異物かもしれない。」とフィードバックをいただきました。
このフィードバックがきっかけで、自分たちがやりたかったことは何かもう一度、考えてみることにしました。
そのフィードバックを受けてどう感じましたか?
(先生方のフィードバックを受けて)囲炉裏を置いたその後の町の想像が出来ず、本当によそ者なアイデアだったと落胆しました。「地域のために」と動いていたけど、自分たちが動くことで地域の方に迷惑をかけてしまったらどうしよう…と不安な気持ちになりましたし、作ることが怖くなりました。
作ることが怖い…わかります。私も記事を書くときに、「この書き方をしたら傷ついてしまう人はいないかな?」と考えてしまい、作業する手が止まる時があります。どうやって怖さを払拭したんですか?
怖さを抱えながらも、フィードバックを受け止めてもう一度地域の方に余呉への想いを聞きました。東京に帰ってからも、余呉での生活を振り返りました。
1ヶ月間、余呉と向き合う中で「私たちを楽しませてくれた余呉の人々を形に残したいんだ」と気づいたんです。
フィードバックを受け止め、再度余呉と向き合うことで“本当にやりたかったこと”に辿り着いたんですね。
そうなんです。そこから、カルタの試作を作って再び11月ごろに余呉へ行きました。
※この頃には授業としての産学連携は終了していたので、自主プロジェクトでの実施となりました。
カルタの試作を地域の方に試していただいたのですが…
結構良い反応をくださったんです!「これ面白いよ」と言ってくださったんです。
おお!それは嬉しいですね。そこからカルタの制作が本格的に始まったんですね!カルタの試作を作ってみて、手応えはあったんですか?
“カルタそのものに共感力”があることがわかりました。試作の段階では、余呉の人々の日々を何かの形にして残したいという想いで、何気ない生活の一部をカルタにしていました。
例えばこんなのとか…
うわぁとっても素敵な札ですね。これも生活の一部なんですか?
これは私たちが実際に体験したことなんです(笑)産学中に夜の余呉湖を散歩していたら、やけに後ろが明るく感じたんです。神が来る!って思うくらい。その明るさの正体は、まん丸なお月様でした。余呉の夜の暗さのおかげでお月様の明るさに感動した時に作った札なんです。
なんて素敵なエピソード…エモい。
他にも住民の皆さんのお話から作った余呉カルタが、話のきっかけになる場面を試作品を試してもらっている時にたくさん見ました。
だから、何気ない日常をカルタで残すコンセプトになったんですね。
おじいちゃんの「やりたかった」を叶えたいおばあちゃん。想いを繋ぐカルタを届けたい。
実は今、11月の構想から進化して「未来のカードを作ろう!」というフェーズになっているんです。
何気ない日常カルタはフェーズ1!?今はフェーズ2に突入しているんですね。未来のカードってどういうことですか?
日常カルタでは今あることや、昔の話だけにフォーカスしていました。しかし、余呉の方々にインタビューをしていく中で、自分しか知らない余呉の魅力や、余呉でやりたいこと、もっと地域を盛り上げたいと思う方々とも出会いました。
そんな地域の未来へ意欲をもつ人々が、未来を描いた余呉カルタを媒体にして、その人がその場にいなくても「こういうことを思ってる人が地域にいるんだ」と人々との関わりやつながりが生まれたらどうなるんだろうとワクワク構想しています。
フェーズ2に移行する決定的なきっかけはあったんですか?
とある、おばあちゃんとの出会いがきっかけです。
聞きたいです!!
亡くなったおじいちゃんが、ずっと余呉を盛り上げたいと言っていたみたいなんです。でも周りにやりたいと言い出せなくて…実現できずに亡くなってしまったんです。インタビューしたおばあちゃんは、「自分ができたらいいんだけど…なかなか話すばもなくて…」と言っていました。
このおばあちゃんにインタビューしたときにカルタが誰かの「やってみたい」を言えるきっかけを作ることができたらいいなと思ったんです。
素敵なお話…じゃあ、出来上がったカルタはいち早くおばあちゃんに使ってもらいたいですね!
はい、このカルタがおばあちゃんの役に立ってくれたら良いなと思っています。
「やってみたい」を未来に伝えるコミュニケーションツール『むくる余呉湖』
カルタは「やりたい」を繋ぐ、新たなコミュニケーションツールになるんじゃないかと思っています。対象は大人〜小学生!未来について、世代を超えて語るきっかけを『むくる余呉湖』で作っていきたいです。
カルタを新たなコミュニケーションツールに。私、小学生向けの体験教室も運営しているので、ぜひ教室の子達にもやってほしいと思いました!
おぉ!ぜひ。今度、余呉の子供たちに学校でやってもらえる機会を頂戴できたんです。完成までもう少し、頑張ります!
2024年3月8日に余呉小中学校でむくる余呉湖を開催!この日は授業の中で7年生、8年生と、地元の方をお招きして実際に「むくる余呉湖」を遊んでもらいました。参加者からは素敵な感想が寄せられているそうです!
みんなと一緒に作る、共感を伝える地域カルタ『むくる余呉湖』。
制作の裏側にはうまくいかなかった経験と、失敗からみえた本当にやりたかったこと、そして余呉の方々のストーリーがありました。
鈴木さんのインタビューを通して、私が普段取り組んでいる教育事業でも、「想いを伝えるコミュニケーション」としてカルタを使うという新たな切り口は、とても勉強になりました。
ストレートに想いを伝えたり、聞いたりする場を作るのではなく、カルタという媒体を通して遊びの中で人の想いに触れることができる、大変素敵な取り組みだと思いました!
完成したら皆さんも是非遊んでみてください!
長浜航海記・船員。京都から長浜へ移住し、株式会社crevus designを設立。小学生向けの体験教室やデザインなどのクリエイティブ事業をしている人。ど根性地べた這いつくばって進むタイプ。